コラム:巨大投資銀行ゴールドマン、軌道修正は成功するか

コラム:巨大投資銀行ゴールドマン、軌道修正は成功するか
 4月15日、米金融大手ゴールドマン・サックスという巨大タンカーは、これまでと違う方向にかじを切り始めている。写真は2011年、ニューヨーク証券取引所(2019年 ロイター/Brendan McDermid)
John Foley
[ニューヨーク 15日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 創業から150年を経た企業はそう簡単に方針を変えられない。しかし米金融大手ゴールドマン・サックスという巨大タンカーは、これまでと違う方向にかじを切り始めている。
ゴールドマンの第1・四半期収入は前年同期比で13%減少したが、中身を見ると同社の投資銀行としての色合いが薄れてきたのは間違いない。
昨年10月に最高経営責任者(CEO)に就任したデービッド・ソロモン氏の下で、ゴールドマンは変動の大きいディーリングやトレーディングが生み出す収入への依存を減らし、より安定的な収益が得られる融資などに軸足を移している。そうした取引はある程度意味を持ってきた。
第1・四半期の収入のうちおよそ60%は比較的振れの少ない事業からもたらされたのだ。金利収入56億ドルは、グループとしては少なくとも過去10年で最高水準だった。
これはゴールドマンが、伝統的な銀行を現代式にアレンジした組織になろうとしていることを物語っている。
アップルと提携して新規のクレジットカード事業を立ち上げたのは1つの例で、それよりは地味だがより実質的なのがゴールドマンの調達資金において、市場からの借り入れではなく預金の割合が高まっていることだ。顧客の預金が調達資金に占める比率は、2017年の23%から足元で25%強まで上昇した。これは投資家が非常に注目している同社の株主資本利益率(ROE)に直接的なプラス効果をもたらす。
ソロモン氏が縮小すべき分野はまだある。第1・四半期のコモディティのトレーディングは、競争相手のJPモルガンと同様にかなり好調だった。ただその収入の振れの大きさは、ソロモン氏が望ましいと考えるゴールドマンの経営スタイルと相容れない。
債券トレーディングは、前年比で11%の減収だったにもかかわらず、なお総収入の21%を稼ぎ出している。減収率はJPモルガンの18%より小さいとはいえ、シティグループは15日、1%の増収を発表した。シティがゴールドマンに比べ、投機筋よりも事業会社向けのサービスの比重が高かった結果だ。
ゴールドマンの軌道修正にはリスクも伴う。
シティやJPモルガンと異なり、利益は前年同期から20%減少した。またゴールドマンが推進している事業では、既に先行組が十分な態勢を確立している。つまりゴールドマンは、競合他社が長年やってきたことをソロモン氏らがもっとうまくやれることに賭ける企業、といった様相を示し始めている。それを証明するにはより長い時間を要するだろうが、少なくともソロモン氏は適切なコースを進んでいる。
●背景となるニュース
・ゴールドマン・サックスが15日発表した第1・四半期の収入は88億ドルで、前年同期比で13%減少した。
・利益は22億ドルで前年同期の27億ドルを下回った。1株利益は5.71ドルと、リフィニティブIBESがまとめたアナリスト予想中央値の4.89ドルを超えた。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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