コラム:グーグル、ロシア当局の圧力にも反撃手段あり
Dasha Afanasieva
[ロンドン 13日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ロシア政府はグーグルを統制下に置きたいのかもしれない。だがグーグル側には、強権的なプーチン政権に反撃する優位な手段があるように見受けられる。
プーチン政権による反体制派の活動阻止の一環として、ロシア通信・情報技術・マスコミ監督庁(ロスコムナゾール)はグーグルに、傘下の動画投稿サイト「ユーチューブ」から当局が許可していない反政府デモの告知映像を削除するよう命じた。ユーチューブは、ロシアの反体制派が利用する媒体の1つで、最近の抗議デモに関しては最大で170万人に視聴された動画もあった。
もっともロシア政府が圧力をかけてきているからといって、グーグルの親会社アルファベットの株主は大きな不安を抱く必要はない。例えば、ロシア企業の情報をまとめたデータベースによると、アルファベットのロシアにおける収入は約9億ドルにすぎない。これは昨年の総売上高1370億ドルの0.7%弱だ。ロシア側の要求に応じ、米議会から検閲に屈したと激怒される危険を冒す価値は乏しい。
より重要なのは、ロシア当局は騒乱の鎮圧や強権発動には長けているだろうが、インターネットを厳格に管理するために必要な意思も能力もないという点だ。中国は数億人のネット利用者を検閲しており、トルコやインドは、政府が望むならいつでもネットの大部分を遮断できる。だがロシアはこれまで繰り返し、暗号化メッセンジャーサービスのテレグラムへのアクセス阻止に失敗してきた。
またロシアはユーチューブをブロックしようとするかもしれない半面、それをためらう理由も十分に持っている。バーチャル・プライベート・ネットワーク(VPN)回線の利用が広がっている以上、ブロックの試みは効果が限られる。その上、ロシアには中国のような政府が管理する代替ネットワークがないので、恐らく国民から出てくる不満は抑えられない。プーチン政権にとって、抗議デモの宣伝拡散を減らすメリットよりも、猫の動画などを共有できなくなる人々からの政治的な反発の方が痛手になると思われる。
ロシアもいずれは、一国内で完結する政府管理のネットワークを整備するかもしれない。しかしこの先しばらくは、インターネット上で政治と無関係なサービスを提供できる国内企業は存在しない。
グーグルは当局への協力を拒めば、罰金処分を科せられる可能性がある。それでも過去の罰金は数千ドルほどのわずかな額だった。ロシア政府も現実的になる公算が大きい。グーグルという目の上のこぶを取り除こうとすれば、少なくとも当面はより大きな傷を負うのだから。
●背景となるニュース
*ロシア通信・情報技術・マスコミ監督庁(ロスコムナゾール)は11日、ユーチューブ上で「違法な集会」を宣伝するのを中止するよう求めたと明らかにした。非政府組織のホワイト・カウンターによると、10日には8年ぶりの大規模なデモが行われていた。
*ロスコムナゾールは、中止要求へのグーグルの対応によっては「主権問題への内政干渉」および「ロシアにおける民主的選挙の妨害と敵対的な影響力行使」として問題視する考えを示した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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