アングル:ヘイリー米国連大使、憶測呼ぶ「退任後」

[ワシントン 9日 ロイター] - ニッキー・ヘイリー米国連大使が退任することになった。ただ与党・共和党が女性票獲得に苦戦する中で、最も知名度が高い党員であるヘイリー氏が再び政治の表舞台に登場してもおかしくない。
ヘイリー氏(46歳)は、2020年の次期大統領選について再選を目指すトランプ氏に挑戦することも含め、出馬があるのではないかとの観測を否定した。しかしそれで次の選挙を巡るワシントン政界の思惑が鳴りを潜めることはない。サウスカロライナ州知事として人気があった時代からヘイリー氏を知る人々は、同氏が今、うらやましいほど引く手あまたの立場にあるとみている。大統領、副大統領、もしくは上院議員の全てに可能性があるという。
サウスカロライナ州時代の側近は「ヘイリー氏が国連大使として残した実績は、自身の評価を上げただけでなく、国連大使という職務の価値を高め、後任者の責任を重くした」と述べた。
実際、キニピアック大学が4月に行った世論調査ではヘイリー氏の仕事ぶりを評価する有権者は全体の63%に達し、民主党員でも55%が肯定的な見方を示した。
ヘイリー氏は退任の理由に関して、しばらく休みたいという希望を述べた程度であまり明確にしていない。辞表には民間への復帰が言及されているとはいえ、ずっと同氏の行動を見てきた人たちの中では、彼女が公的な仕事からそれほど長く離れることはないとの予想が支配的だ。
チャールストン大学のジョーダン・ラグサ教授(政治学)は「(退任の)一番それらしい理由は、ヘイリー氏が大統領選出馬をにらんでトランプ氏とある程度距離を置きたいということだ」と話した。
国連大使を務めて、それまで乏しかった外交経験を加えたヘイリー氏は、今や共和党の顔としては理想の候補者になっている。トランプ氏の人気をさらうことなく協調するすべを理解しながらも、自分にとって大事な問題では屈しない政治姿勢を持っているからだ。
またヘイリー氏は、性的被害を受けたと訴える女性らがたとえトランプ氏を非難しているとしても、彼女たちの言い分に耳を貸すべきだと主張。ロシアへの態度はトランプ氏よりも強硬であり、バージニア州シャーロッツビルで起きた白人至上主義者と抗議グループとの衝突事件を巡っては、自らのスタッフにヘイト主義に反対するよう求め、トランプ氏と好対照をなした。
 10月9日、ニッキー・ヘイリー米国連大使(左)が退任することになった。ワシントンで撮影(2018年 ロイター/Jonathan Ernst)
ヘイリー氏の退任で、同氏がリンゼー・グラム氏の代わりにサウスカロライナ州の上院議員になる可能性も取りざたされている。
ワシントンでささやかれているのは、トランプ氏が中間選挙後に司法長官をジェフ・セッションズ氏からグラム氏に交代させるなら、2020年の次回選挙までのグラム氏の後釜を選ぶ責任はヘンリー・マクマスター・サウスカロライナ州知事に委ねられるという筋書きだ。
マクマスター氏は、ヘイリー氏の州知事時代の副知事だった。
さらにここにきて、トランプ氏が20年の選挙で副大統領候補を現職のマイク・ペンス氏からヘイリー氏にすげ替えるとの見方も急浮上しつつある。
サウスカロライナ州の共和党委員長を務めたカレン・フロイド氏は「ヘイリー氏の政治人生は前途洋々で、恐らく副大統領かそれ以上の道が開けている」と話す。トランプ氏は女性の大多数に支持されておらず、ヘイリー氏が女性票取り込みに投入される展開はあり得る。
チャールストン大学のクレア・ウォフォード教授(政治学)は、ヘイリー氏が選挙勝利の確率を高められる方法をいくらでも思いつくのは確かだと述べた。
ただ共和党のストラテジスト、リック・タイラー氏は、副大統領候補がペンス氏からヘイリー氏になる事態は「ありそうもない」とみている。ヘイリー氏の将来は大きく開かれているものの、もうトランプ政権には復帰しないのではないかという。
(Ginger Gibson記者)

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