株価の底探る投資家、金融危機に手掛かり求める

[ロンドン 25日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて株価が2月の過去最高値水準から約30%落ち込む中、投資銀行は買いに転じるタイミングを探ろうと2008年の金融危機時のモデルに手掛かりを求めている。
米欧で感染が引き続き急速に広がる中で、転換点を見極めるのは容易ではない。しかし、米国による2兆ドル規模の対策法案を巡る期待や、米連邦準備理事会(FRB)など主要中央銀行による前例のない対応に支えられ、24日の各国株式市場は大幅な上昇を見せた。
米株式投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX指数)も直近の高水準から低下している。
一部の投資家は、株価好転のシグナルが出ているとみる。
パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントを率いる著名投資家ビル・アックマン氏は自身の上場ファンドの投資家に対し、株式とクレジット商品について明るい見方を強めているとし、3月上旬に設定したヘッジを解除したと伝えた。
モルガン・スタンレーのクロスアセット戦略責任者アンドリュー・シーツ氏は、2008年も含め、このような状況では市場は危機の終息よりかなり前に底を打つことが多いと指摘。
「(市場の底入れには新型コロナ)感染者がピークを打つ必要はない。今後の道筋をある程度見極め、その道筋に満足する必要があるだけだ」と語った。
JPモルガンは、今回の危機が実体経済に先に打撃を及ぼし、次に金融市場に波及するという特殊なケースであることを踏まえると、底を探る方法は複数あるとしている。
JPモルガンのクロスアセット戦略責任者ジョン・ノーマンド氏によると、1つ目のモデルは、リセッション(景気後退)が終わる可能性が高い時期の前の四半期、つまり今が買いに転じる好機だと示唆しているという。同氏は、新型コロナに起因する景気後退は「間違いなく深刻なものになるが、これまでで最短になる可能性もある」と述べた。
ノーマンド氏はまた、JPモルガンの世界購買担当者指数(PMI)に反映される実際の状況好転の兆しを待つのも1つの方法だと指摘。
さらに3つ目の方法として、バリュエーションに基づくモデルでは、複数の資産クラスでリスクプレミアムが「ディープバリュー」を示す一定の水準に低下すれば「買い」のシグナルだとした。
ノーマンド氏によると、後者2つのモデルではまだ買いのシグナルは出ていないという。
リフィニティブのデータによると、向こう1年間の予想株価収益率(PER)に基づく米欧株のバリュエーションは現在、歴史的平均を大幅に下回っている。
一方、クレジット市場は依然ディストレス状態にあることを示唆している。米ジャンク(投機的)等級社債の利回りは約10%と、1カ月前の6%を大幅に上回っている。
欧州のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)指数も、ピークから低下しているものの、依然として520ベーシスポイント(bp)付近と、2月末時点の2倍近い水準に高止まりしている。
VIXは直近の高水準から30%低下しており、リスク資産には前向きな兆候だ。しかし、2008年のケースでは、VIXの低下から市場の底入れまでに5カ月かかった。
2008年の景気後退は長期間続いた。一部のエコノミストは、今回の場合、第3・四半期までに世界の成長が上向くと予想する。
一方、景気後退がどれほど深刻になる可能性があるか、市場はまだ十分把握できていないと警戒する見方もある。
TSロンバードの戦略責任者アンドレア・シシオーネ氏は、失業者の増加や企業の設備投資削減といった2次的影響を懸念している。
ウィリアム・オニール+カンパニーの首席投資ストラテジスト、ランディ・ワッツ氏は、現時点では新型コロナの感染状況と経済への影響が市場の道筋を左右する重要な要因になるという。
「米国の死者または新規感染者がピークに達するか、治療やワクチンが開発されるか、もしくは米経済が活動を再開するか、この3つのどれかが起きるまで、短期的には非常に不安定な値動きが続くだろう」と語った。

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