アングル:夏の到来で新型コロナは終息するか

アングル:夏の到来で新型コロナは終息するか
4月24日、北半球が温暖な季節を迎えることで、新型コロナウイルスの感染拡大にはブレーキがかかるのか。写真は26日、スペインのイグアラダで、約6週間ぶりに外で遊ぶ子供たち(2020年 ロイター/Nacho Doce)
Kate Kelland Manas Mishra
[24日 ロイター] - 北半球が温暖な季節を迎えることで、新型コロナウイルスの感染拡大にはブレーキがかかるのか。世界はその兆候を探し求めている。新型コロナウイルスによる死者はすでに19万人を超え、各国がロックダウン(都市封鎖)や渡航制限を課すなかで、グローバル経済は混迷に陥っている。
感染症の拡大に伴う季節的な要因について分かっていることを紹介しよう。
<新型コロナウイルスに「季節性」はあるのか>
感染症専門家のあいだには、それを期待する声もある。だが確信は持てない。科学者たちが必要なエビデンス(証拠)を集めるには、ウイルスが発見されてからの期間が短すぎるからだ。
英イーストアングリア大学の感染症専門家ポール・ハンター氏は、「同じような形で拡大する他の疾病から類推するしかない」と語る。
専門家らが確実に分かっているのは、インフルエンザや咳風邪、その他普通の風邪など呼吸器系に影響する感染症には季節的な要因があるということで、それにより、感染拡大を予測し封じ込めやすくなっている。
また、ある種の環境的条件がウイルス感染を加速する場合があることも分かっている。寒冷な気候、湿度、冬のあいだの人々の行動様式なども疫病の推移に影響を与える可能性がある。
ジョージワシントン大学のリアナ・ウェン教授(公衆衛生学)は、「この新型コロナウイルスについて季節性があるか否かは分からない。だが、他のコロナウイルスには季節性があることが分かっている」と話す。同教授は救命医でもあり、ボルチモア市衛生局長を務めたこともある。
<冬に呼吸器系の疾患が広がりやすくなるのはなぜか>
英レディング大学の細胞微生物学の専門家サイモン・クラーク氏は、「寒い季節が咳風邪やその他普通の風邪、インフルエンザの拡大をもたらすと想定されている理由は、冷たい空気が鼻道・気道の炎症を招き、それによってウイルスに感染しやすくなるからだ」と説明する。
また寒い冬には、屋内で他の人たちと集まって過す時間が長くなる傾向も見られる。
呼吸器系の感染症の多くは、感染者が咳やくしゃみをするときに放出する飛沫によって拡散する。感染症の専門家によれば、空気が冷たく乾燥しているときは、こうした飛沫が空気中に長時間漂い、遠くまで到達し、より多くの人を感染させる可能性が高まるという。
米国土安全保障省のウィリアム・ブライアン科学技術局長代行は23日、政府の研究者らは、新型コロナウイルスの感染力が気温・湿度の上昇とともに、そして日光の照射によって弱まることを確認したと発表した。
新型コロナウイルスは、湿度の高い環境では消滅が早まるように思われる。米国の研究では、暗く乾燥した環境での実験においては、ステンレスなど通気性のない素材の表面でウイルス粒子の半数が機能を失うまでに18時間を要した。
だが高湿度の環境では、ウイルス粒子の半数が不活化し感染力を失うまでに要する時間は、6時間に短縮された。高湿で日光の当たる状況では、半数が不活化するまでの時間は2分になった。
ジョンズホプキンス大学医療安全保障センターの上級研究員で米国感染症学会の広報担当者を務めるアメシュ・アダルジャ氏は、「ウイルスが周囲の環境によって影響されることは分かっている。多くのウイルスは、高温下や紫外線放射が強い状況では生き残れない」と述べている。
だがアダルジャ氏は、夏の気候条件によって、表面に付着したウイルスの生存能力を損なう可能性はあるが、それは人から人に感染しなくなるという意味ではない、と警告する。
<夏の到来は感染抑制につながるのか>
ハンター氏は、「新型コロナ感染症が北半球の夏のあいだにかなりの程度抑え込まれる可能性は高い」という。
一方、「流行が再燃するかどうかは議論の余地がある」とハンター氏は言う。「夏のあいだにほぼ消滅し、冬になって再び現われても私は驚かない」
とはいえ一般論としては、免疫を持たない人が非常に多いだけに、新型コロナウイルスの感染拡大が「今後も続く可能性は高い」とアダルジャ氏は言う。
(翻訳:エァクレーレン)

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