コラム:ドル安とフラット化に賭けるヘッジファンドの「勝算」

コラム:ドル安とフラット化に賭けるヘッジファンドの「勝算」
 11月28日、ヘッジファンドは今年これまで債券と通貨の取引でもうけるのが難しかったが、年の瀬を迎えて運用成績を上向かせるために2つのテーマを頼りにしているようだ。写真はドル紙幣と米地図。6月撮影(2017年 ロイター/Thomas White)
Jamie McGeever
[ロンドン 28日 ロイター] - ヘッジファンドは今年これまで債券と通貨の取引でもうけるのが難しかったが、年の瀬を迎えて運用成績を上向かせるために2つのテーマを頼りにしているようだ。米国債イールドカーブのフラット化とドル安だ。
最近の値動きが参考になるとすれば、こうしたテーマに賭ける取引には勝算がある。米国債の長短利回りスプレッドは過去10年で最も小さく、足元はフラット化が劇的なスピードで進んでいる。ドルの下落は3週連続で、これは7月以降で最も長い。
米商品先物取引委員会(CFTC)が公表した最新のポジション動向を見ると、投機筋は米10年債の買い持ちと短期債の売り持ちを拡大し、ドルに関してはこの2カ月で初めて売り持ちになった。
市場参加者の見立てでは、米連邦準備理事会(FRB)の利上げで短期債利回りが上昇するが、長期債利回りは低インフレと弱い成長によって抑制される。
こうした中で2─10年の利回りスプレッドは27日に56ベーシスポイント(bp)と10年ぶりの低水準を記録した。
ほんの1カ月前の同スプレッドは約85bpで、これほど急激なフラット化ペースが続くなら、来年早々には逆イールド化してもおかしくない。
過去40年余りでは逆イールドが発生すれば、すぐ後に景気後退(リセッション)が必ずやってきた。果たして今回は違うのだろうか。確かに米経済が着実に2.5%ペースで成長し、完全雇用に近い状態にあるのに、どうしてこんなにイールドカーブがフラット化しているのか、あるいはフラット化が急進行するのか、明確な理由は見当たらない。
もっともヘッジファンドや投機筋が景気減速、ないしはリセッションの到来までも信じているのかどうかは、さして重要ではない。彼らがやっているのは、市場のトレンドに乗って年末の成績確定前にできるだけリターンを高めようという作業だからだ。
CFTCのデータによると、21日までの週に投機筋は米2年債の売り持ちを2万8646枚増やして22万7294枚に、また5年債の売り持ちは7万5000枚強増やして31万1268枚にしている。
こうした数字からは、2年債と5年債の売り持ちが過去最大規模の31万2453枚と46万9845枚だった数週間前の状況に再び戻る流れにあることが分かる。
残存3年までの米国債利回りは現在、世界金融危機を受けて過去最低になった2008年終盤以降で最も高い。5年債利回りも9年ぶりの高水準まであと数bp圏内にある。
対照的に10年債利回りは、3月につけた2.60%前後の直近ピークを上抜けできず、9月までは2%割れしそうな様相だった。足元も2.35%近辺で推移している。
イールドカーブのフラット化と軌を一にするように、ドルは9月と10月の値固め局面後に勢いを失い、9月初めにつけた20カ月来安値も再び視野に入ってきた。
11月になってドルは前月の上昇分をすべて吐き出し、月間では7月以降で最悪の値動きになろうとしている。4週連続下落となれば、4月以来だ。
CFTCのデータでは、投機筋による円、ユーロ、ポンド、スイスフラン、カナダドル、豪ドルに対するドルの売り持ち規模は21日までの週が31億5000万ドルと、前週の6億4300万ドルから大幅に膨らんだ。ニュージーランドドルやメキシコペソ、ブラジルレアル、ロシアルーブルを含めたより広範なポジションでも、ドル売り持ちが24億1000万ドルから52億3000万ドルと2倍以上に増えた。
今年は債券と通貨を取引するマクロ・ヘッジファンドがずっと苦境に置かれている。マクロ・ヘッジファンドの年初来リターンは3.5%で、調査会社プレキンが動向を追っている6種類の戦略の中で最も成績が振るわない。
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