コラム:インドの「縁故資本主義」、モディ関連株が選挙後急騰

コラム:インドの「縁故資本主義」、モディ関連株が選挙後急騰
 5月20日、インドでは、あるいは少なくともこの国の投資家の間では、クローニー・キャピタリズム(縁故資本主義)がまだまだ健在のようだ。写真は4月、インドのバラナシで支持を訴えるモディ首相(2019年 ロイター/Adnan Abidi)
Una Galani
[ムンバイ 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] - インドでは、あるいは少なくともこの国の投資家の間では、クローニー・キャピタリズム(縁故資本主義)がまだまだ健在のようだ。
19日に投票が終わった下院選で、モディ首相の与党連合が過半数を獲得する見通しとの出口調査の結果が出ると、インドの富豪アニル・アンバニ氏、さらに複合企業アダニ・グループのゴータム・アダニ氏に関連する企業の株は急騰した。
両氏ともモディ首相と同じ州の出身で、首相と近しいと考えられている。この市場の反応は、長年の認識を変えることがいかに難しいかを示している。
寛大な指導者が権力を握ったと投資家が受け止めると、規制の厳しい業界で負債を抱える企業の株価は持ち直す傾向がある。時価総額が20億ドル(約2200億円)近いアダニ・エンタープライゼスの株価は19日、競合他社と株価指数を大きく上回り、一時30%上昇した。同社は5年前、モディ首相率いるヒンズー至上主義政権が勝利した際にも恩恵を受けた企業のひとつだ。
今回の選挙は違うはずだった。モディ首相は、これまで国内の首領たちへの規制を強化してきた。例えば、電気通信やインフラ関連の企業はよりオープンな入札を経て契約を締結しなければならなくなった。
また、政府は詐欺罪に問われている富豪のビジェイ・マリヤ氏を帰国させて裁判にかけようと努力している。携帯サービス大手リライアンス・コミュニケーションズは、2016年に抜本的に改正された破産・倒産法に沿って処理を進めている。
ムンバイの金融エリートたちは首相の政策の変化を敏感に察したが、その変化は小規模な投資家までは伝わっていないのかもしれない。今回の反応を見るに、融資の3分の2を占める公的金融や、裁判所といった機関は、今後も影響を受け続ける可能性がある。
株価の上昇は、週末に行われたオーストラリアの総選挙の結果が好感されたことや、それ以外の安心材料がいくつかあったからかもしれない。野党第1党はアダニ氏とアンバニ氏の企業帝国による汚職を訴えていたが、両氏のグループ企業だけでなく、政府もそれを否定した。
週明け19日の株価上昇には重大な意味がある。モディ首相は国内・国外の両方でインドという国がどう見られているかを変える必要があるからだ。
外国から新しい投資を呼び込み、不正な国内取引を撲滅し、一般の国民に税金を払ってもらうためには、人々の考え方を変えなければならない。それなしに、経済の効率を高めることはできない。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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