米雇用統計、予想ほど減速せず:識者はこうみる

米雇用統計、予想ほど減速せず:識者はこうみる
 1日、米労働省が発表した10月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月から12万8000人増と、予想ほど減速しなかった。写真はコロラド州で2017年8月撮影(2019年 ロイター/Rick Wilking)
[1日 ロイター] - 米労働省が1日発表した10月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月から12万8000人増と、予想ほど減速しなかった。8月と9月の雇用者数は合わせて9万5000人分上方改定された。経済が鈍化する中でも個人消費が当面は下支え要因になることを示唆した。市場予想は8万9000人増だった。
市場の見方は以下の通り。
<米連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)の首席エコノミスト、ダグ・ダンカン氏>
差し迫った金融緩和の必要はないという米連邦準備理事会(FRB)の見解を支える良好な内容となった。今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で適切な決定をしたという安心感をFRBに与え、今後数カ月にかけて状況が悪化しない限り、金利は当面据え置かれるだろう。
製造業部門の雇用者数は3万6000人減少したが、同部門が全体の労働人口に占める比率が10%に満たない現状を踏まえれば、経済全体を圧迫するほどの影響を及ぼすかどうかは疑問だ。また、自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)のストライキ終結などを考慮すれば、製造業部門でみられる雇用減の大半は一時的で、回復が見込まれる。
こうした状況を加味すれば、今回の雇用統計は実際の数字よりも力強い内容と言える。
<TDアメリトレード(シカゴ)の主任市場ストラテジスト、JJキナハン氏>
雇用統計は、自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)のストが製造業の雇用に響いたとはいえ、全体的に非常に良好な内容だった。市場は好感するだろう。注目すべき点は、飲食業の底堅さが目立つ中、特に不動産に絡む金融業で雇用の伸びが見られるということだ。住宅市場の健全性を巡っては投資家の多くが依然疑心暗鬼となっているが、こうした兆候は経済の全般的な回復を裏付け、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策を正当化するとみられる。
<ステートストリート・グローバルアドバイザーズ(ボストン)の首席投資ストラテジスト、マイケル・アローン氏>
労働市場の終焉といううわさはかなり誇張されたものだ。予想を超える雇用者数のほか、過去2カ月で計9万5000人分上方改定されたことは、今回の指標がゼネラル・モーターズ(GM)のストや国勢調査向け雇用が減少した逆風を乗り越えたという事実と合わせ、労働市場が予想よりはるかに良いことを物語っている。
非常に興味深いのは、国勢調査向け雇用者を中心にパートタイム労働者が減少する一方で、労働参加率が増加したことで、今統計の基調的な強さを示している。
投資家は今回の指標について、労働市場が予想より強く、今朝の株式市場を支えるとみている。今統計は、経済が低金利や緩やかなインフレを背景に2%程度で成長するという見方を引き続き支えており、それが株式市場の支援になる。
一方で、警戒感や景気後退(リセッション)が近いというシグナルになるほど弱くはなかったが、米連邦準備理事会(FRB)や他の中央銀行が金利を引き締めるほど強い内容でもないと言える。

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