コラム:日銀のETF購入、各国中銀の教訓に

コラム:日銀のETF購入、各国中銀の教訓に
 3月25日、日銀はかねて、中央銀行界の不幸な先駆者だった。新型コロナウイルスの感染拡大による経済損失に対処するため、かつてない極端な政策に踏み切ろうとしている各国中銀は、2013年から上場投資信託(ETF)を買い続けてきた日銀の経験に興味津々だろう。写真は都内の日銀本店前。2019年1月23日撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)
Swaha Pattanaik
[ロンドン 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 日銀はかねて、中央銀行界の不幸な先駆者だった。新型コロナウイルスの感染拡大による経済損失に対処するため、かつてない極端な政策に踏み切ろうとしている各国中銀は、2013年から上場投資信託(ETF)を買い続けてきた日銀の経験に興味津々だろう。
とりわけ関心を示しているのはパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長かもしれない。議長は今週、格付けの高い米社債を対象とするETFを購入する計画を発表した。
日銀は24日、保有するETFの含み損が2兆―3兆円に上ると認めた。これは悲惨そのもの、というほどの規模ではなさそうだ。
ETFの含み損が、日銀が保有国債から得る金利収入を上回ったとしても、日銀には準備金がある。年度末と半期末に開示する保有証券の価値に損失が生じても、準備金によって十分賄えるはずだ。しかもETFの含み損が増大し続ければ、政府が介入して日銀に資本を注入することができる。
理論的には問題ない。しかし実際には、含み損が膨らめば政界と国民から批判が起こる可能性が高い。政府が日銀の損失を穴埋めする結果になれば、日銀に対する政治圧力が高まるかもしれない。政治家が黒田東彦総裁へのあからさまな攻撃を控えたとしても、投資家は日銀が政治の干渉から無縁でいられるかどうか、疑問を抱き続けるだろう。
政策立案者らが市場の暴落から経済を救おうと励んでいる現在、これは小さな不都合にすぎないと映るかもしれない。先進国の金利はゼロ近辺かマイナスまで下がり、各国中銀は既に大量の国債を購入しているため、中銀は今後、幅広い政策の行使をためらわなくなるだろう。欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーであるスロバキア中銀のカジミール総裁は24日、ECBが将来的にETFを購入する可能性を排除しないとした。ECBがETFの購入を検討することがあれば、黒田総裁の経験と試練を精査する価値はあるだろう。
●背景となるニュース
*日銀は24日、株価急落によりETFの含み損が2兆―3兆円に上ったと認めた。
*スロバキア中銀のカジミール総裁は24日、将来的にECBがETFを購入する可能性を排除しないとした上で、まだ何も決まっていないと説明した。
*FRBは23日、高格付けの米社債を対象とするETFの購入計画を発表した。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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