アングル:内需株に広がる親子上場解消、東証市場改革も「促進材」か

アングル:内需株に広がる親子上場解消、東証市場改革も「促進材」か
 12月27日、2020年の株式市場におけるテーマの1つは、親子上場の解消だ。写真は東京証券取引所で2018年10月撮影(2019年 ロイター/Issei Kato)
[東京 27日 ロイター] - 2020年の株式市場におけるテーマの1つは、親子上場の解消だ。これまでは製造業系企業が中心だったが、内需系企業にも広がる兆しも出てきた。その背景には、東京証券取引所の市場改革もあるとみられている。日本の株式市場にみられる「特殊性」が解消されることで、投資家を呼び込むことができるか注目されている。
政府の未来投資会議のデータをもとに岡三証券がまとめた資料によると、親子上場企業数がその市場に占める割合は、米国0.5%、英国0%、フランス2.2%、ドイツ2.1%に比べて、日本は6.1%となっている。
日本市場全体で親子上場する企業数は09年度の420社から18年度までに285社へ減少してきたものの、「依然としてコーポレートガバナンスの観点から海外投資家を中心に批判が多い」と、岡三証券のグローバル金融調査部チーフストラテジスト、松本史雄氏は指摘する。
こうした中、注目されたのが、J.フロント リテイリング<3086.T>によるパルコ<8251.T>の株式公開買い付け(TOB)だ。市場からは「これまで親子上場の解消は製造業系に多かったが、内需系も動いてきた。こういった動きは来年年間を通じて出てくる可能性が高い」(東海東京調査センターのシニアエクイティマーケットアナリスト、仙石誠氏)との見方が出ている。
「日本企業は横並び意識が強く、同業・同規模の会社がやって評判が高まると自社でもやりたくなる場合が多い。非製造業の一部の企業が始めたことで、国内のドメスティックな企業にもその意識が広がっていく可能性がある」と岡三証券の松本氏はみる。
<流通時価総額基準を警戒か>
東証の市場改革が親子上場解消を促す要因になるとの見方もある。
金融庁が24日に公表した東京証券取引所の市場改革に関する金融審議会の報告書によると、最上位市場の「プライム市場」(仮称)に新規上場する際の基準について、市場で流通する株式数と1株あたりの株価を掛けて算定する「流通時価総額」で100億円以上を目安とする案が出ている。
流通時価総額を用いた場合、親子上場に対する警戒も出やすい。現在の1部上場企業は、新たな時価総額に関する基準を満たしていない場合でも、希望すればプライム市場への上場維持が基本的に認められる。しかし、新たなインデックス(TOPIX)採用企業選定の際は、流通時価総額が100億円を下回れば除外される可能性があるためだ。
投信会社や年金基金などを除き、保有比率が10%を超える投資家の保有分は流通株として認められない形となるため、親会社による持ち分が大きく流通株が少ない上場子会社にとって、流通時価総額の基準で不利に働く可能性がある。
「この市場改革は、親子上場の解消を促す狙いもありそうだ」と東海東京調査センターの仙石氏はみる。
25日の東京株式市場で、パルコ株はTOB価格を意識した動きとなり、大引けはストップ高比例配分となった。親子上場解消の動きが日本株市場を活性化させるのか、2020年の大きなテーマとして注目されている。

杉山健太郎 編集:石田仁志

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