コラム:K―POP「BTS」の上場計画、新型コロナで暗雲か

コラム:K―POP「BTS」の上場計画、新型コロナで暗雲か
3月18日、K―POPが、かつてないほど厳しい批評家と向き合うことになるかもしれない。写真はソウルのBTSグッズを扱う店舗で2019年12月撮影(2020年 ロイター/Kim Hong-Ji)
Sharon Lam
[香港 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - K―POPが、かつてないほど厳しい批評家と向き合うことになるかもしれない。投資家だ。世界的ボーイバンド「BTS(防弾少年団)」の所属音楽レーベル「ビッグ・ヒット・エンターテインメント」は上場の準備を進めている。同社の売上高は急増しているが、ヒット頼みのこの業界において、今後の命運は水物だ。新型コロナウイルスの感染拡大によってコンサート収入が激減する今、高値で上場できる見通しはどんどん暗くなっているようだ。
BTSは、アカデミー賞を受賞した映画「パラサイト 半地下の家族」をもしのぐ規模の韓国が誇る輸出文化だ。音楽配信サービスの「スポティファイ」や動画投稿サイト「ユーチューブ」、動画アプリ「Tik Tok」などを通じ、K―POPはアジアを越えて欧米市場にまで広がった。BTSの最新作「Map of the Soul:7」は米ビルボード200チャートの首位に輝き、BTSのアルバムでは2年弱で4枚目の快挙となった。これはポップグループとしてビートルズ以来の記録だ。
韓国のビデオゲーム・サイト大手ネットマーブルを後ろ盾とするビッグ・ヒット・エンターテインメントは、BTSの大成功を追い風に、上場による資金調達を計画している。リフィニティブ傘下のIFRは先月、同社が年内の新規株式公開(IPO)を目指して複数の銀行を雇い入れたと報じた。ビッグ・ヒットは最近、昨年の売上高が前年比約2倍の5880億ウォン(約500億円)、営業利益は980億ウォンに達したと発表した。
同社が今年も売上高を倍増し、昨年の営業利ざやを維持できるという楽観的な想定に立ってみよう。同業他社と同じく、株価収益率(PER)が2020年利払い・税引き前利益(EBIT)予想の約13倍だとすると、ビッグ・ヒットの企業価値は21億ドル(約2290億円)前後となる。
とはいえ、同社はBTSに大きく依存しており、BTSのメンバーらは徴兵制の兵役年齢に近づいている。気まぐれなポップスビジネスにおいて、長期間の活動中止はキャリアの終わりを意味しかねない。しかもK―POP株は最近、超大物スターのスキャンダルで急落している。例えばYGエンターテンメントは、元スターの幹部が収賄と売春の容疑で辞任し、昨年3月以来、株式時価総額が45%も減少した。
しかも新型コロナの影響で、欧米なども含めてショービジネスは文字通りストップしている。BTSは既に今年ソウルで予定していたツアーを中止した。こうした環境でビッグ・ヒットが市場にデビューしても、チャートのトップを飾れるかどうかは、はなはだ疑問だ。
●背景となるニュース
*IFRが2月25日、事情に詳しい複数の筋の話として報じたところでは、ビッグ・ヒット・エンターテインメントは今年下半期にIPOを実施するため、JPモルガンなど銀行4行と契約した。
*ビッグ・ヒットは2月28日、新型コロナの感染拡大が懸念されるため、BTSが4月にソウルで予定していたツアーを中止すると発表した。 
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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