コラム:マクロン仏大統領の口出し、日産・ルノーには「逆効果」
Pete Sweeney
[香港 26日 ロイター BREAKINGVIEWS] - マクロン仏大統領が26日、日産自動車<7201.T>とルノーが協力を深める素晴らしさを説き聞かせたことは、両社の関係円滑化にとってはかえってマイナスだ。日産は25日の株主総会でも分かったように、アライアンスに対する疑念を強めている。
仏政府としては、この際沈黙を守ることがルノーへの支援になるだろう。
日産の総会ではある株主が、ルノーに対する怒りをぶちまけた。日産株43%を持つルノーが、アライアンスによって昨年生み出された推定65億ドルのシナジー効果を過大に享受していると考える人は、この株主1人ではない。両社の関係が悪化したのは、会長を務めていたゴーン被告が昨年逮捕されてからだ。ゴーン被告は日本側のクーデターを疑い、日産はゴーン被告が会社を困難な局面へ向かわせたと批判した。
5月にフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)によるルノーとの経営統合計画が、ルメール仏経済財務相の介入で白紙撤回された後、日産とルノーの仲はさらに冷え込んだ。FCAとルノーが統合していれば、日産はルノー株15%の保有を通じて大きな見返りを得た上に、多額の経費節減を実現できた。しかし土壇場でルメール氏が統合案への日産の承認獲得や、その他いくつかの条件を要求し、FCAのエルカン会長が手を引く形になったのだ。
ルノーのスナール会長は、日産からの強い抵抗にもかかわらずアライアンスの深化をより急ピッチで推進し続けている一方、西川社長兼最高経営責任者(CEO)が率いる日産経営陣は、社内管理態勢改善と販売回復に全力を注いでいる。
スナール氏は経営面での発言力も高めたい考えだ。そのため今月に入って一時、日産のガバナンス向上を目的とした指名委員会等設置会社への移行議案について、ルノー側の委員会代表を増やさない限り、反対する意向を示していた。結局、スナール氏の要求が通った半面、信頼関係は失われた。
日産と日本政府は、ルノー株の保有をてこに仏政府が影響力を行使することを嫌っている。西川氏が、FCAのルノー統合案採決について日産代表の棄権を決めたのも、この統合が仏政府の影響力を薄める上で有利な材料になるとの見方が日本国内にあったことをうかがわせる。
ルメール氏は、アライアンス強化につながるならルノー株保有を喜んで減らすと発言している。日産としても、それ以上は何も望んでいない。だが西川氏がこれまでに仏政府から得たものと言えば、協力強化の意義に関するマクロン氏の「ご高説」だけで、その統制的なメッセージをスナール氏が読み取っているのではないかと日産が一段と疑心暗鬼になるだろう。仏政府は何も言わずにルノー株を売却することが、明るい未来につながる。
●背景となるニュース
・マクロン仏大統領は26日、ルノーと日産のアライアンス強化にはシナジー促進が必要だと述べた。
・日産の西川社長兼CEOは25日の株主総会で「ルノーとの関係が一方だけ得をする形になれば、即座に解消される」と語り、不平等な関係は続かない恐れがあると警告した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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