コラム:ロックダウン下でデートアプリが快調、新型コロナの新常態

コラム:ロックダウン下でデートアプリが快調、新型コロナの新常態
マッチ傘下の最大アプリ「ティンダー」(写真)は売上高が前年同期から31%増加し、平均登録者数は28%増えた。2016年2月、英カーディフで撮影(2020年 ロイター/Mike Blake)
Dasha Afanasieva
[ロンドン 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - デートアプリ運営会社ティンダーの共同創業者、ショーン・ラッド氏はかつて、自社のマッチングアプリは広々とした空間への恐怖心から生まれたとジョークを飛ばしたことがあった。このジョークが真実なら、同氏のアプリをはじめ、親会社マッチの他のアプリやバンブルといった競合相手は、ロックダウン(封鎖)の世界におあつらえ向きといったところだ。
現実はもっと複雑だ。オンラインデートの興隆は不特定多数との一夜限りのお遊びが拡大することを意味していた以上、新型コロナは一時的にせよ事業に打撃を与えていたかもしれなかった。しかし、デートがもっと2人の将来を約束するような関係を意味するようになれば、話は違う。人々が身体的ないちゃつきをそうそうできなくなっても、出会い系オンラインサービスのビジネスモデルが安泰なままであることも意味する。
人々の「親密な関係」の在り方を変えた病気は新型コロナウイルス感染症が初めてではない。1960年代の避妊ピル導入と足並みをそろえた、フリーセックスを標榜する自由恋愛主義は、エイズ禍の始まりとともに遠い記憶になり果てた。
一夜の相手とのデートを楽しむ文化はその後に再燃する。ジャーナル・オブ・セックス・リサーチによると、2004-12年の調査では45%が直近1年で不特定の相手と夜を過ごしたと答えた。1988-96年では35%だった。そうしたデートの回数も、04-12年の方が増えていた。
こうした流行が、ティンダーや同業者への需要をかき立てきた。
ところが、感染力の高い新しいウイルスがこれを脅かす。4月には米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長が、デートアプリの利用が新型コロナの流行を助長すると警告した。
そうなると不特定多数の相手との出会いを求めるよりも、もっと伝統的な、マッチング手段で結婚相手を探そうとするような風潮が強まる可能性がある。少なくとも新型コロナのワクチンが流通するまでは。
これは、ティンダーの売りである「ライト・スワイプ」、つまり良さそうなお遊びの相手を探して携帯端末のスワイプ操作を気軽に繰り返す行動が減ってしまう可能性が高いことを意味しそうだ。ティンダーの価値は240億ドル(約2兆5500億円)で、親会社マッチにとっては最大のアプリ。売上高の半分以上を600万人の有料会員から得る。
しかし、投資家は、マッチが新たな社会規範に適合できると確信しているように見える。同社は5日、第1・四半期決算で売上高が17%増加したと発表。これを受けて株価は年初来高値を付けた。シャー・デュベイ最高経営責任者(CEO)は、テレビ通話型のサービスをもっと展開すると表明。ティンダーに食われてきた、もっと伝統的な同社のアプリをそうしたサービスで強化する計画だ。
テレビ通話型は既にちょっとした流行になっている。バンブルによると、3月27日に終わった週のテレビ通話型のやりとりは海外も含め、13日までの週から56%増加した。
テレビ通話機能を使えば、パートナーになれるかもしれない通話相手を一人一人品定めする時間を効率化できるので、結果的に利用者がアプリにはまる時間が長くなる。
新型コロナは人々を身体的には引き離した状態にしているが、デジタル空間での関係はむしろ深まっている。
「長く続く愛」と「短期間のいちゃつき」との相互錯誤の心理から利益を得る企業にとっては、新型コロナによる事業の中だるみも、魅力ある新サービスとの出会いのチャンスになるのかもしれない。
●背景となるニュース
*マッチングービス大手マッチが5日発表した第1・四半期決算は、売上高が前年同期比17%増の5億4500万ドル。リフィニティブのデータによると、ほぼアナリストの予想に沿った数字だった。
*営業利益は13%増の1億3500万ドル、調整後EBITDA(利払い・税・償却前利益)は11%増の1億7200万ドルだった。
*マッチ傘下の最大アプリ「ティンダー」は売上高が前年同期から31%増加し、平均登録者数は28%増えた。
*マッチのシャー・デュベイCEOは株主に宛てた書簡で、第2・四半期中に1対1の対話型のテレビ通話サービスを立ち上げる計画を明らかにした。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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