コラム:モルガンS、ゴーマンCEOの成績評価は「中位」
Antony Currie
[ニューヨーク 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米金融大手モルガン・スタンレー(モルガンS)のジェームズ・ゴーマン最高経営責任者(CEO)は、2009年9月の就任からこれまで10年間の成績を評価するなら「中ぐらい」といったところだろう。
ゴーマン氏の下でモルガンSは、ウェルスマネジメント事業の有力プレーヤーの一角になった。おかげでトレーディング事業が経営に及ぼす影響は小さくなったが、同事業から完全に手を引いたわけではない。だからこそゴーマン氏就任以降にモルガンSが達成してきた株主へのリターンは、他の米大手4社に対して勝っているケースもあれば、負けたケースもある。
モルガンSが株式、債券、通貨、コモディティのトレーディングで得た収入は第2・四半期に前年比15%減少した。これはバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)の10%減より悪いとはいえ、シティグループ、ゴールドマン・サックス、JPモルガンといった面々よりもずっと小さな落ち込みにとどまり、決して壊滅的ではない。21億ドル余りというトレーディング収入は、ゴールドマンが肉薄したものの依然として業界最大だった。債券トレーディング収入は11億ドルと大手5社中最も低調だが、ゴーマン氏が想定していると述べた範囲に収まっている。
さらにモルガンSのトレーディング事業は、収益面で重要性が薄れている。第2・四半期の利益が過去最高を記録したウェルスマネジメント事業は今や、今年上半期の税引き後利益の42%を生み出している。この比率は、ゴーマン氏が関与してモルガンSがシティからスミス・バーニーを取得する前の2007年には33%にすぎなかった。ウェルスマネジメント事業は、投資銀行事業に比べて半分程度の資本を投下すればよいので、株主資本利益率は投資銀行のほぼ2倍だ。
こうした状況を背景にモルガンSは、ゴーマン氏が就任してからずっと株主を比較的満足させている。株価の推移と配当の組み合わせで、年間総リターン6%を提供してきたからだ。
この数字は、S&P総合500種の上昇率とJPモルガンのリターンと比較すれば半分未満であるのは間違いない。ゴーマン氏とほぼ同時期にCEOになったブライアン・モイニハン氏が率いるバンカメのリターンにもわずかに及ばない。しかしシティを上回っているだけでなく、より重要なのは総リターンが3.6%にとどまるゴールドマンをしのいでいる。それ自体が1つの成果と言える。
●背景となるニュース
・モルガン・スタンレーが18日発表した第2・四半期利益は20億ドル強、1株当たり1.24ドルだった。リフィニティブのまとめたアナリスト予想は1.14ドル。
・収入は102億ドルとアナリスト予想の100億ドル弱を上回った。株主資本利益率(ROE)は年率11.2%だった。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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