ブログ:日本の車いすダンサー、夢の五輪で伝えたいメッセージ

ブログ:日本の車いすダンサー、夢の五輪で伝えたいメッセージ
車いすダンサーの神原健太さんが目指しているのは、2020年東京パラリンピックの開会式あるいは閉会式でパフォーマンスを披露し、障害者・健常者の双方に「違っていてもかまわない」というメッセージを送ることだ。写真は日本オリンピックミュージアム前で、2歳の娘と。2月22日、東京で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Linda Sieg
[東京 10日 ロイター] - 急速ターン、回転、手を伸ばし、つかむーー車いすダンサー、神原健太さんの情感豊かなパフォーマンスは、芸術的な情熱と可能性がそこにあるという無言の証明だ。
生まれつき脊髄の機能が損なわれる「先天性二分脊椎症」により下半身がまひしている神原さんが目指しているのは、2020年東京パラリンピックの開会式あるいは閉会式でパフォーマンスを披露し、障害者・健常者の双方にメッセージを送ることだ。「違っていてもかまわない」というメッセージを。
「足で歩けなければ手で歩けばいい。できないと思っていること、やりたいけどできないことがあるなら、別の方法でやればいい」。34歳のシステムエンジニアで、2歳の娘の父親である神原さんは、ロイターにそう語った。
「最近は『多様性』という言葉をよく聞くけれど、違うからこそ面白いということを実際に体験した人はそう多くない。私が踊るのを見て、私の体が他の人と違うから面白いのだと理解してほしい。それが他の人の違いを受け入れるきっかけになればいいと思う」と神原さん。「そういう気持ちが障害のある人との壁を低くするから」と話す。「もちろん、『かっこいい!』とも思ってほしい」
母親に一生歩くことはできないだろうと告げられたとき、神原さんは神戸の小学校3年生だった。
「ショックで頭が真っ白になった。たくさん泣いた記憶がある」という。「でもいま思うと、そのときから障害とどう付き合っていくか考えるようになった。目標を達成するために違ったやり方を探るようになった」
子どものころから身体を前進させるのに腕を使ってきたので、神原さんの上半身はよく発達している。ダンスを始めたのは5年前だが、1年も経たないうちに、リオデジャネイロ・パラリンピックの閉会式でダンスを披露するまでになった。
振り付けは自己流で、車いすの上での逆立ちしたり、細い腕や指をくねらせたり、折り畳んだ車いすの上でくるくる回ったりする。車いすそのものも彼のパフォーマンスに欠かせない一部なのだ。
「ダンスを始める前から障害とどうやって付き合うかという覚悟ができていた。だからダンスに救われたとか、そういうことは特にない。ただ、普段の生活で車いすは面倒だけど、車いすを使うことが自分にしかできないダンスにつながっている」。神原さんはそう語る。「障害にはネガティブなイメージがある。でもダンスについては自分にしかできないことがある」
神原さんは長い間、まひした自分の脚が恥ずかしく、隠そうとしてきた。だがダンスによってその感覚が変わった。「今まで隠してきたものが、ステージの上では個性的で人の心を動かすものになると知った」という。
神原さんは、学校でもパフォーマンスや講演を行っており、子供たちに強い印象を与えている。
「生まれつき障害があっても、あんな格好いいダンスができるのはすごいと思う。車いすに乗って生活するのは本当に大変だと前は思っていたけど、楽しいかもしれない」と、小学2年生の松尾光夏さん(8)は目を輝かせる。
パラリンピックでパフォーマンスをするだけでなく、神原さんにはもう1つの夢がある。パラリンピックへの関心を高めるために、オリンピックの閉会式で踊ることだ。
「自分は障害者だからパラリンピックにしか出られない、と枠をつくらず、オリンピックも視野に入れて活動していこうと思っている」と、神原さんはいう。一方でパラリンピックとは対照的に、オリンピックの開会式・閉会式に関してはオーディションという開かれたチャンスは用意されていないとも指摘する。パラリンピック関連のオーディションについては、3月末までに結果が出る予定だ。
主催者は否定しているものの、新型コロナウィルスの世界的な流行により東京オリンピック・パラリンピックが中止されるという憶測も渦巻いている。だが神原さんは、落ち込んではいないという。「たとえ中 止になっても、また別の機会に世界が注目する舞台に立つ」
(撮影:翻訳:エァクレーレン)

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