コラム:仏ルノーの「脱ゴーン化」努力、効果は限定的か

コラム:仏ルノーの「脱ゴーン化」努力、効果は限定的か
 7月25日、仏ルノーが「脱ゴーン化」に躍起となっている。写真は6月12日、仏ボルドーで撮影(2019年 ロイター/Regis Duvignau)
Liam Proud
[ロンドン 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 仏ルノーが「脱ゴーン化」に躍起となっている。スナール会長は、ルノーの前会長兼最高経営責任者(CEO)で日産自動車<7201.T>前会長のゴーン被告とつながりのあるアドバイザー企業との契約を切ろうとしている。これは会社のスナール色を強めるのに役立つだろう。しかし筆頭株主のフランス政府がうるさくつきまとう状況は変わりないため、日産やフィアット・クライスラー・オートモービルズ (FCA)との合併協議再開のいかなる希望も、簡単に打ち砕かれる可能性がある。
ルノーの株主は今でも、FCAとの経営統合計画の破談を残念に思っている。フィアットの試算では、経営統合は年間約50億ユーロのコスト削減効果を生むはずだった。しかし、FCAは6月、「フランスの政治情勢」を理由に提案を撤回した。
その後、スナール会長は社内の改革に取り組んでいる。事情に詳しい関係者によると、ルノーはゴーンCEO時代の長年の金融アドバイザー、アルディア・パートナーズを切る。アルディアはゴールドマン・サックス出身者が設立した独立系助言会社。FCAとの統合計画でルノー側のアドバイザーを務めたが、幹部の1人がFCAの取締役でもあったため物議をかもした。
ルノーは、ゴーン前CEOが目をかけたコミュニケーションアドバイザーやセキュリティーコンサルタントとの契約も解消する構えだ。
ルノーが東京で起訴されたゴーン前CEOと一定の距離を取るのはもっともだ。フランス政府にしても、ゴーン前CEOとなんらかの関係を続けるのに二の足を踏むのは当然だ。
ただ、アドバイザーを入れ替えたところで日産ないしFCAとの、あるいはこの2社との経営統合を妨げている最大の障害が取り除かれるわけではほとんどない。
日産と経営統合すれば企業連合の絆が強まり、さらに、ルノーが43%保有する日産株がひどく過小評価されている状態は解消されるだろう。FCAと経営統合すれば生産台数を拡大させ、ルノーの電気自動車技術を活用することもできて、コストも下げることができる。
しかし、経営統合の真の障害はフランス政府だ。フランス政府はFCAとの統合計画でルノー取締役会の決議延期を求め、エルカンFCA会長による提案撤回の原因となった。日産に対しても、フランス政府は「フロランジュ法」によって2倍の議決権を手に入れられるため、日産が政治介入を警戒するのは当然だ。
こうした障害を克服する手腕を備えたアドバイザーを見付けるのは難しい選択となろう。
●背景となるニュース
*事情に詳しい関係者がBreakingviewsに語ったところによると、ルノーのスナール会長は、同社の金融アドバイザーであるアルディア・パートナーズとの関係を打ち切ろうとしている。スナール氏はルノーとの付き合いの長いコミュニケーションアドバイザーやセキュリティーコンサルタントとの契約も切ろうとしているという。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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