アングル:ロシア、サウジ攻撃後の中東で存在感 米国の隙狙う

アングル:ロシア、サウジ攻撃後の中東で存在感 米国の隙狙う
9月30日、サウジアラビアの石油施設2カ所が無人機による攻撃を受けてから約2週間が経過したが、この間に中東地域で最も巧みに存在感を増している国がある。写真は6月、大阪宇のG20サミットで会談するサウジのムハンマド皇太子とプーチン露大統領(2019年 ロイター/Kevin Lamarque)
[ロンドン 30日 ロイター] - サウジアラビアの石油施設2カ所が無人機による攻撃を受けてから約2週間が経過したが、この間に中東地域で最も巧みに存在感を増している国がある。米外交政策の隙を虎視眈々と狙うロシアだ。
無人機の攻撃から数時間後、ロシアの兵器輸出会社ロソボロネクスポートは、最新型対無人機兵器の販売について中東の複数の国と交渉すると発表した。長いこと米国が牛耳ってきた市場に割り込む素早い動きだった。
ロシアのプーチン大統領は来月、サウジなど中東湾岸諸国を歴訪する予定。石油などエネルギー分野での協力強化、対空防御システム「パーンツィリ」への投資や販売の促進などを図る機会となる。
ロシアの攻勢は、米国の政策ミスを叩く機会を絶対に逃さないプーチン氏の対米姿勢が背景にある。そして、同氏が中東地域での影響力拡大に自信を深めている様子も浮き彫りになった。
プーチン氏は16日にアンカラで開かれたロシア、イラン、トルコの3カ国による首脳会談で、イランやトルコはロシア製の兵器を購入しており、サウジアラビアも米国製ではなくロシア製を購入すべきだと米国を挑発した。
英王立国際問題研究所のマシュー・ブレグ氏は「ロシアは中東のあらゆる分野に関与する態勢を整えつつある」と指摘し、この地域を支配するのがロシアの最終的な狙いだとした。
<米政策の変化で弾み>
ロシアは2015年にシリア内戦に介入してから中東での動きを強めてきたが、米国が中東政策を軌道修正したことでこの流れに弾みが付いた。
米国はオバマ前大統領がシリア問題への介入から距離を置き、トランプ氏も攻撃的な発言とは裏腹に、中東で実際に行動を起こすことは避けている。先のサウジ石油施設攻撃でもトランプ氏は、米国には臨戦態勢ができていると述べたが、武力攻撃には踏み込まず、対イラン制裁の強化にとどめた。
このため、米国が盟友サウジを守るために軍事力を行使する用意があるのかを巡り懐疑的な見方が浮上し、ロシアが付け入る隙が生まれた。
国際戦略研究所(IISS)のコリ・シャッケ氏は「ロシアはシリアへの投資から利益を回収するチャンスがある」と述べ、西側諸国がリスクを取らない国々でもロシアは違う、という姿勢を示すことはサウジに安心感をもたらすだろうと述べた。
<欧州諸国に変調も>
フランスのマクロン大統領は、ロシアによるクリミア併合後に導入した欧州連合(EU)による対ロシア制裁の継続を訴えてきた。しかし、この数週間は欧州諸国とロシアの協調を呼び掛けている。
ルドリアン仏外相は今月、「ロシアと欧州の間にある不信感を減らす取り組みを行うときが来た。ロシアと欧州は戦略的、経済的なレベルでパートナーとなるべきだ」と述べた。
英フィナンシャル・タイムズ紙は、ロシアとの関係で実際的になるべきだ、とEUの駐ロシア大使がEU指導部に伝えていたと報道。ロシアと長い国境線を持つフィンランドは、以前から対ロシア政策で同じような主張を展開している。
ポーランドやバルト諸国が強固に反対しているため、EUが即座に対ロシア政策を変える可能性は小さい。しかし欧州当局者によると、EU内部では実際的な対ロシア政策を支持する国が増えているという。
(Luke Baker記者)

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