コラム:サンダース氏「国民皆保険」の夢、新型コロナも後押し
Anna Szymanski
[ニューヨーク 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米野党民主党のバーニー・サンダース上院議員にとって、最後は激動の数カ月だった。8日、サンダース氏は米大統領選に向けた同党の大統領候補指名争いから撤退すると表明。2カ月弱前にはネバダ州の党員集会で約3分の2の代議員を獲得し、明確なフロントランナーとなっていた。その後はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)が大統領選(そしてサンダース氏も)を脇に追いやってしまった感がある。とはいえ、新型コロナの大流行は同氏の国民皆保険ドリームを実現に近付けるかもしれない。
サンダース氏の撤退により、ジョー・バイデン前副大統領が民主党候補の指名を獲得することが確実となったものの、サンダース氏が議論のテーマを形作ったことは明白だ。同氏が2016年の予備選挙で最終的に指名を獲得したヒラリー・クリントン氏を相手に40%以上の票を獲得して党に衝撃を与えるまで、民主党候補者が国民皆保険や学生ローン債務の帳消し、不法入国の非犯罪化といった提案への立場を真剣に考えることはほとんど考えられなかった。
サンダース氏はまた、穏健派の意味も変えてしまった。バイデン氏の政策はサンダース氏の13兆ドルの医療保険制度、もしくは16兆ドルのいわゆる「グリーン・ニューディール」には依然として程遠い。ただ、バイデン氏は15ドルの最低賃金、気候変動対策向け1兆7000億ドルの支出、向こう10年でヘルスケアへの8000億ドル追加拠出を支持。これらはそう遠くない昔には進歩的とみなされていただろう。
そして今ではCOVID-19がサンダース氏の支出プランをそれほど突飛なものではないように見せている。米政権は既に、国内総生産(GDP)の約1割に当たる2兆ドル超の経済対策を成立させた。
新型コロナ危機はまた、ヘルスケアへのより包括的で連携を強めたアプローチの利点に目を向けさせている。健康は個人の問題とみなす危険性と同様、米医療制度の脆弱性があらわになっている。今では、たとえサンダース氏が提唱する「メディケア・フォー・オール」プランではなくとも、何らかの普遍的な制度の可能性がかなり高まっているように見える。
米国の政治には「オヴァートンの窓」という概念がある。特定の時代の社会において政治的に受け入れられる考え方の範囲を指す概念で、これは時代とともにシフトする可能性がある。サンダース氏の最も偉大なレガシー(遺産)はオヴァートンの窓を広げ、米国がCOVID-19の経験を考察する余地を与えたことかもしれない。
●背景となるニュース
*米野党民主党のバーニー・サンダース上院議員(78)が8日、今年の米大統領選に向けた同党の大統領候補指名争いから撤退すると表明した。
サンダース氏の撤退により、中道派のジョー・バイデン前副大統領(77)が民主党候補の指名を獲得することが確実となり、11月3日の本選では再選を目指す共和党のトランプ大統領(73)と対決する見通しだ。[nL3N2BW06L]
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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