アングル:サウジ・ロシアが歴史的急接近、原油市場安定で協調

アングル:サウジ・ロシアが歴史的急接近、原油市場安定で協調
 6月1日、OPECの盟主サウジアラビアと非OPECの産油大国ロシアの間で、突如デタント(雪解け)が進んでいる。写真はモスクワで5月30日撮影(2017年 ロイター)
[モスクワ 1日 ロイター] - 石油輸出国機構(OPEC)の盟主サウジアラビアと非OPECの産油大国ロシアの間で、突如デタント(雪解け)が進んでいる。原油安で従来の対立路線の修正を迫られた形だが、両国間の緊張緩和で原油業界は様相が一変するかもしれない。
OPECと非加盟国は先週、協調減産の延長を決めたが、その直後にロシア国営石油会社ロスネフチのイーゴリ・セチン最高経営責任者(CEO)とサウジの国営石油会社サウジアラムコのアミン・ナセルCEOがサウジの都市ダーランで会談した。
両者は過去にイベントなどで何回か顔を合わせているが、正式な会合を持ったのは初めて。関係筋2人によると、会合は話題がインドネシアやインドなどアジア市場での協力関係の可能性などに及ぶなど、内容的にもかつてない広がりを見せた。
関係筋は協議の詳細を明かさなかったが、サウジとロシアがアジアでの協力関係について話し合ったのは初めてだという。会合ではナセル氏自らがセチン氏を連れてアラムコ本社内を案内する一幕もあった。
セチン氏とナセル氏が会談したという事実は、サウジとロシアの急接近を考える上で示唆に富む。原油消費国は原油の輸出大国である両国の対立関係につけ込み、より有利な契約条件を手に入れてきただけに、今回の動きに注目するだろう。
サウジとロシアの関係改善は、かつてはほとんど想像すらできなかった。米国のシェールオイル生産の急増により原油価格は2014年半ば以降急落したが、それにもかかわらずサウジとロシアの間では1年前まで事実上、対話すら皆無だった。セチン氏はOPECとの協調減産にも強硬に反対していた。
しかし、わずか数カ月で状況は急変。ロシアとサウジは協調減産の延長で足並みをそろえ、両国にとって重要なアジア市場で協力する可能性を話し合うまでになった。
両国関係に詳しい中東湾岸諸国の高官は両国関係について「新たな『愛の枢軸』だ」と評した。
また30日にはロシアのプーチン大統領がサウジアラビアのビン・サルマン副皇太子と会談。副皇太子は会談について「最も重要なのは、原油市場とエネルギー価格の安定に向けて確固とした基盤を作れたことだ」と述べた。
増産の有無などを巡り激しく対立していたサウジとロシアが急に歩み寄ったのは、経済面や政治面からそうせざるを得なくなったためだ。
原油価急落で両国の経済は赤字に転落し、回復は遅々として進まない。政治的にもロシアは来年初頭に大統領選を控えており、サウジのビン・サルマン副皇太子は経済改革の断行を掲げ、アラムコの株式上場を予定している。両国ともこれ以上の原油価格下落は受け入れられない。
サウジが昨年、長年にわたり石油鉱物資源相を務めたヌアイミ氏を退任させ、ファリハ氏を後任に据えたことも関係改善を後押しした。
ロシアのノバク・エネルギー相は先週、協調減産の延長を話し合う会合で「ファリハ氏が言ったことならば間違いない」と述べた。
ノバク氏とファリハ氏は30日、原油市場の安定のために「できることは何でもする」とあらためて強調した。また、両者は米国のシェールオイルなど、OPEC非加盟国の生産の見通しなどについても話し合ったという。
(Dmitry Zhdannikov記者、Vladimir Soldatkin記者)

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