コラム:市場が読み違える日韓対立、韓国半導体の株価上昇
Robyn Mak
[香港 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 日韓の貿易問題が、半導体業界の業績見通しを読みにくくしている。時価総額480億ドル(約5兆1800億円)の韓国半導体大手SKハイニックス<000660.KS>の第2・四半期純利益は、前年同期から88%減少した。
にもかかわらず、同社株は上昇した。日本が韓国に対するハイテク材料の輸出規制を強めたことで、半導体の供給が圧迫され、価格が上昇するとの期待が広がったためだ。しかし、半導体需要の減少やサプライチェーンが寸断されるリスクを考えれば、株価上昇の根拠は薄弱だ。
世界第2位の半導体メモリーメーカー、SKハイニックスが25日発表した4─6月期の純利益は5370億ウォン(約491億円)と、リフィニティブがまとめたアナリスト予測の平均を約15%下回った。
スマートフォンやサーバーなどに使われる同社製メモリーの平均価格は、需要が会社予想を大きく下回り、前年同期比で約25%低下した。
しかし、ソウル株式市場に上場するSKハイニックスの株価は、決算発表を受けて一時3%も上昇した。もともと同社の時価総額は、日本政府が今月4日に半導体材料3品目の対韓輸出について規制を強化したことを受け、決算発表前から約40億ドル増加していた。
投資家は、供給不足によって半導体価格が上昇するほうにかけている。実際、SKハイニックス幹部は投資と生産を減らすと発言している。
確かに、輸出審査を強化した3品目は、日本が世界生産の7─9割を占めている。メモリー半導体であるDRAMのスポット価格は、日本政府の規制強化を受けて急騰した。
だが、そもそもスポット価格による取引はほんのわずかであり、固定取引価格への影響が最終的にどうなるかはまだ判然としない。調査会社トレンドフォースは、半導体メーカーにはまだ3カ月分程度の在庫があると推計している。これは価格を圧迫する要因となり続けるだろう。
また、一般的に見て需要は停滞気味だ。携帯電話の出荷も今年は再び減少に転じる見通しで、パソコンやデータセンター市場の改善も限られそうだ。
日韓の対立に早期の解決策が見通せない中、日本以外の代替供給元を見つけるのは、SKハイニックスや競合のサムスン電子<005930.KS>にとって巨額のコスト負担だ。大きな混乱も招く。
投資家の楽観的な姿勢は、読み間違えているようにみえる。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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