コラム:ソフトバンクはユニコーン狙い、変わる日本の投資戦略

Robert Cyran
[ニューヨーク 24日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ソフトバンクグループ<9984.T>とソフトバンク・ビジョン・ファンドが米共用オフィス運営のウィーワークに総額44億ドルを投資する。
かつて日本企業はゴッホの絵画「ひまわり」やロックフェラー・センターを買い漁ったものだが、今どきの標的はユニコーン企業(時価総額10億ドル超の非上場新興企業)だ。ただ、名画と違ってオフィス運営会社は唯一無二の存在ではなく、競合他社に真似されて価値が下がる恐れもある。
ソフトバンクとビジョン・ファンドは今年、数多くの上場企業の株式に投資してきたが、大型の投資は非上場の新興企業に絡むものが目立った。中国配車サービス大手、滴滴出行に50億ドルを出資したほか、がん検査やデジタル決済、工業ソフトウエアなどに取り組む新興企業に多額を投じている。
ヤフー・ジャパン<4689.T>の例に見られるとおり、孫氏の大成功のいくつかは、西洋の技術を日本に輸入することによって実現した。ウィーワークはそうした手法にぴったりだ。ソフトバンク陣営は30億ドルの出資に加え、中国、日本、その他アジア地域のウィーワーク事業に14億ドルを投資する。
ウィーワークは仕事および居住の新潮流に乗る企業だ。同社が提供する事務所スペースは、間仕切りだらけの殺風景な部屋ではなく、デザイナーズホテルのような雰囲気がある。この魅力が数多くの若い企業を引き付け、50以上の都市に展開したことで優良企業も事務所スペースの獲得に関心を示すようになった。
ソフトバンクはウィーワークの企業価値を170億ドルと評価しており、大幅な成長を当てにしている。確かに、開業から1年程度のビルで30─40%の利ざやを確保し、利払い・税・償却前利益(EBITDA)で収支トントンに近い業績を挙げていることは誇っていい。とはいえウィーワークは、年末までに年率換算の月間収入10億ドルを目指す小規模な企業だ。
同社は借りたビルを又貸ししているため、次の景気後退が訪れて顧客が離れたり、好景気が続いてビルの所有者が賃料を引き上げたりすれば、利ざやは縮小する。それに物件を小奇麗にして又貸しするというビジネスは、何ら特別なものではない。ソフトバンクによる巨額の投資に触発され、ウィーバンクを真似する企業が続々と現れれば、ソフトバンクの投資効果は陰りかねない。
●背景となるニュース
*ウィーワークは24日、ソフトバンクグループととソフトバンク・ビジョン・ファンドから30億ドルの追加出資を受けたと発表した。中国や日本、韓国、東南アジアでウィーワークが運営する新企業3社にも14億ドルを投資することになっている。
*この投資に関連し、ソフトバンク取締役副会長のロナルド・フィッシャー氏と社外取締役のマーク・シュワルツ氏がウィーワークの取締役に就任する。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab

Opinions expressed are those of the author. They do not reflect the views of Reuters News, which, under the Trust Principles, is committed to integrity, independence, and freedom from bias.