アングル:スペイン選挙、若く現代的な首相候補に欠ける多様性

Isla Binnie
[マドリード 23日 ロイター] - スペインで28日に実施される総選挙は、過去数十年間で最も結果が読みづらい。世論調査によるとなお4割の有権者が投票先を決めておらず、単独過半数を獲得しそうな政党もいない。
ただ次期首相は、どんな政治的信条を持っているにせよ、若くて国際感覚を持ち、白人の男性になることだけは確実だ。こうした多様性の欠如により、有権者の一部の声が置き去りになる恐れが出てくる、と政治評論家は話す。
全く見当たらないのは女性層や、高齢化と人口減が進む地方を代弁する政治家だ。ある政治コンサルタントは、首相候補の画一的な顔ぶれを見ると、まるで有名百貨店の販売カタログのようだと表現している。
22日夜に行われたテレビ討論でも、そうした印象は変わらなかった。社会労働党のペドロ・サンチェス首相、中道右派野党の国民党のパブロ・カサード党首、同じ中道右派野党のアルベール・リベラ党首という有力候補3人は、同じような濃いブルーのスーツを身に着け、はっきりしたとした勝者もいなかった。
現有議席ゼロのため討論に呼ばれなかった極右政党「ボックス(VOX)」のサンティアゴ・アバスカル党首は、似たような候補がそろった様子を皮肉るつぶやきを投稿している。
<都会的>
世論調査の支持率で30%前後と首位を走っているサンチェス首相は、社会労働党で頭角を現す過程でその若さを武器にしてきた。しかし今やスペインには若く、現代的なスタイルの政治家が次々に登場。47歳になったサンチェス氏は、もはや最も年齢が高い首相候補になった。
一方でカサード氏は38歳、同氏とキャラクターやスーツの好みがそっくりなリベラ氏は39歳だ。極右のボックスのアバスカル氏(43歳)でさえ、大学卒でひげをきれいに整えており、ネクタイを締める機会が多い。
反緊縮を掲げて2015年に議席を得た急進左派ポデモスのパブロ・イグレシアス氏だけは、髪の毛を後ろで縛るなどよりカジュアルだが、それでもテレビ番組のレギュラー出演者としてそれなりに身なりに気を使っている。
若者や都市住民、高度な専門性を持つ職業の従事者などはこれらの候補に親しみを持つかもしれないが、技術の進歩にあまりついていけなかったり、過疎化が進行する地域にいるような人たちにとっては、厳しい事態が訪れるのではないか。
先の政治コンサルタントは「有力候補者は、多くが大学で学び、修士号を取得した彼らの世代を反映している」と指摘。半面、人口減少が顕著な地方の人々の立場が全く映し出されていないと付け加えた。
過疎地域の住民らは先月、マドリードで自分たちのことを忘れないでほしいとデモ行進している。
<男女格差>
スペイン政界の世代交代は顕著だが、女性の進出はほとんど見られない。ユーラシアのアナリスト、フェデリコ・サンティ氏は「性別の観点では、なお多いに改善すべき面があるのは間違いない」と批判した。
シウダダノスとポデモスには有名な広報担当者の女性がおり、特にシウダダノスのイネス・アリマダス氏は、同党のカタルーニャ独立反対姿勢を先頭に立ってアピールしてきた。
それでも2人とも党首ではなく、サンティ氏によると、全ての政党を見渡しても女性は補助的な役割を与えられる傾向があるという。

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