前場の日経平均は続騰:識者はこうみる

前場の日経平均は続騰:識者はこうみる
 3月25日、<大和証券 チーフテクニカルアナリスト 木野内栄治氏> 今回の株価上昇の根本は、米国はじめ各国が協調して打ち出す経済対策での景気回復期待ではなく、信用不安の後退が大きい。写真は都内で2018年10月撮影(2020年 ロイター/ISSEI KATO)
[東京 25日 ロイター] - <大和証券 チーフテクニカルアナリスト 木野内栄治氏>
今回の株価上昇の根本は、米国はじめ各国が協調して打ち出す経済対策での景気回復期待ではなく、信用不安の後退が大きい。
これまでの下げは、新型コロナウイルスの影響による景気悪化懸念に、途中から原油価格急落に伴う信用不安が重なった経緯がある。ロシア、サウジアラビアが増産を続ければ、米国のシェールオイルが退場を余儀なくされることになり、そこでクレジットリスクが生じる。2015─2016年のチャイナショック時と同じ構図だ。
今回、米国が明らかにした大規模な経済対策実施で、景気回復に伴う原油需要増加のレールを敷いた形となり、現在は、チャイナショックが収まった時と同じような状況になっている。日経平均が2万円を割り込んだ時点で「原油価格が急落せず、材料が新型コロナだけなら2万円を大きく下回ることはなかった」と言われたが、信用不安が後退してきたことで、その水準まで戻ったと思えば分かりやすいだろう。
ただ、問題はこれから。相場は、信用不安によるオーバーシュートを解消したのにすぎない。欧米の状況をみると、すぐに景気が回復するとは思えず、本格的な戻りを探るのは新型コロナの終息を待ってからだろう。武漢の封鎖解除のニュースを踏まえると、そこまでに2カ月程度はかかるのではないか。
<岡三アセットマネジメント シニアストラテジスト 前野達志氏>
新型コロナウイルスの感染拡大を受けた各国の政策対応が評価され始めている。ただ、新規感染者数は増え続ける一方で、マクロ経済への影響はいまだ不透明だ。大底を打ち、上がり始めている段階には至っていないのではないか。
欧米では大胆な外出禁止令を発動するなど事態が深刻化しているが、日本はどちらかというと持ちこたえている。今後日本でオーバーシュートが発生し、外出禁止令などが発動されるとなると、日本株は再び売りの対象となるだろう。中国・湖北省武漢市との感染状況を比較する動きをよく見るが、共産党によるドラスティックな移動規制措置を打ってさえも、措置解除まで2カ月超の時間を要している。あまり楽観視はできない。
マーケットとは下がったら上がるものだ。短期で利益を上げたいヘッジファンドはショートカバーで上昇した際に乗るだろう。ただ、これを受け長期投資家が腰を落ち着かせて買うかと聞かれると、そうでもない。当面の上値めどは1万9500円といったところだろうか。2万円へ買い上がるには、新型コロナの終息といった新たな材料が必要となる。
<岡地証券 投資情報室長 森裕恭氏>
完全に底入れのパターンとなり、ここからは節目として意識されている日経平均2万円に向け、戻りを試す局面になっている。米国株式の大幅高、外為市場で1ドル=111円台まで振れた円安など手掛かりはあるが、これまで理屈抜きで下げてきただけに、反発局面においてもテクニカルを無視するような同様の動きになっても不思議ではない。
昨日は、上げ材料とされてきた日銀のETF買いが入らなかった。2日続けて2000億円買ったインパクトは大きく、下がれば買うという姿勢が印象付けられたことで、売り方は窮地に陥った。また、期末を前にして、日銀の平均買いコストとされる1万9500円が強く意識され、これに絡んでカチ上げなど思惑も生じるだろう。いずれにしても、当面は強烈な巻き戻しが起きるとみられる。

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