アングル:世界的な株式・債券の異例な同時高はいつまで続くか

アングル:世界的な株式・債券の異例な同時高はいつまで続くか
 4月21日、今年初め以降、世界的に株式と債券が同時に値上がりする異例の局面が続き、世界経済の強気派・弱気派双方の投資成績が好調となっている。ニューヨーク証券取引所で18日撮影(2019年 ロイター/Brendan McDermid)
[ニューヨーク 21日 ロイター] - 今年初め以降、世界的に株式と債券が同時に値上がりする異例の局面が続き、世界経済の強気派・弱気派双方の投資成績が好調となっている。
主なきっかけは、米連邦準備理事会(FRB)が1月に予想外の利上げ停止に踏み切ったことだった。景気が減速し、物価が落ち着く中で昨年の4回にわたる利上げが過度な金融引き締めだったのではないかとの不安が広がり、12月に世界的な株安が進んだ事態を踏まえた動きだ。
ただ足元ではS&P総合500種が過去最高値に迫り、高利回り社債相場が高値を更新する展開になったことから、株式と債券の投資家は、FRBの次の一手が利下げとなってリスク性資産の価格をさらに押し上げるのか、あるいは利上げが実施されて株価の勢いをそいでしまうのか思いを巡らしている。
そしてFRBが実際に金利を上下いずれかの方向に調整するか、もしくは市場との対話を間違えた場合、年末までには株価と投資適格債のどちらかの上昇が止まり、本来の株式と債券の逆相関が復活する公算が大きい、と投資家は話す。
イートン・バンス・マネジメントのポートフォリオマネジャー、キャスリーン・ガフニー氏は「FRBは非常に難しい局面にある。物価が上昇する兆しが存在する以上、利下げはできない。また世界的な政治不透明感から利上げも不可能だ。だから市場を待機させたままにしている」と指摘した。
その上でガフニー氏は、FRBは賃金上昇やその他のインフレ要素を理由に年末までに再び利上げせざるを得なくなりそうで、それが株式と債券の同時高に風穴を開けると予想した。
<株安につながる要素>
ロイターの分析に基づくと、S&P総合500種と米10年債の価格変動は4カ月移動平均ベースでともに3カ月連続プラスを維持した。これは、2017年8月までの5カ月連続プラス以来の長さだ。
この17年の時期にもS&P総合500種と10年債価格がそろって上昇。背景にはトランプ政権初年の強弱が交錯した経済ニュースを市場が消化していたという状況があった。同時高が崩れたのは同年9月で、FRBが「量的引き締め」を開始して債券利回りが上昇に転じた一方、株価は上がり続けた。
今年1月以降に目を向けると、S&P総合500種と欧州のSTOXX600は足元までにおよそ16%上昇し、中国株の主要指数の上昇率は30%近くに達している。世界的に昨年第4・四半期の落ち込み分をほぼ取り戻した。ICEメリルリンチ米高利回り債指数は8.6%の上昇で、これだけなら単なる「リスクオン」の場面だが、同時に安全資産とされる米10年債利回りも年初の2.69%から3月終盤に2.34%まで低下(価格は上昇)した。
もっともウェルズ・ファーゴ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジェン・ロバートソン氏は、年初来の株価の急速な戻りは第1・四半期の企業業績で悪いニュースが出れば打撃を受ける恐れがあるし、10月末に延期された英国の欧州連合(EU)離脱や米中貿易協議に関するさらなる不透明感が、株式と債券の両方にショックを与えて相場を不安定化させてもおかしくないとの見方を示した。
3月に米3カ月物財務省証券(Tビル)と10年国債の利回りが07年以降で初めて逆転(逆イールド化)すると、当初は株価を押し上げた。過去に景気後退の到来を予告してきた逆イールド化を受け、FRBが追加利上げをためらうと投資家が見込んだだめだ。
しかし富国生命投資顧問の林宏明常務取締役は、景気後退懸念が高まり続ければ、株価はすぐに下落する可能性があるとみている。
林氏は「過去の例を見れば、逆イールドが始まってから6カ月から9カ月間は株価が上昇し、その後大幅な調整を迎えることが多い。今はまさにそうした局面にあると考えている」と述べた。
(David Randall記者)

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