コラム:ハイテク大手に投資集中、ITバブルと違う形の危険性

コラム:ハイテク大手に投資集中、ITバブルと違う形の危険性
8月12日、今の米株式市場は、ITバブルを彷彿させるのだろうか。写真はアマゾン、アップル、フェイスブック、グーグルのロゴ(2020年 ロイター)
Robert Cyran
[ニューヨーク 12日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 今の米株式市場は、ITバブルを彷彿させるのだろうか。リフィニティブ・データストリームによると、米国の最大手企業約1000社の合計時価総額は33兆ドルで、このうち31%をハイテク株が占めている。中でもアップル、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、グーグル親会社アルファベットといったごく一部の巨大IT企業の価値だけが突出して高い。これは投資家の熱狂が行き過ぎている危険なサインと解釈することもできる。
株式市場におけるセクター別のウエートは、その産業が経済でどれほど大事か、また投資家からどのような印象を持たれているかを映すことで、次第に変わりゆく物語を紡ぎ出している。石油セクターは1980年代初め、全時価総額のおよそ4分の1を占めたが、足元では重要性が低下し、石油の供給過剰傾向もたたって、時価総額のウエートは3%まで低下した。より最近ではハイテクセクターの時価総額が2000年に全体の3分の1を超えるまで急膨張した後、ハイテクバブルが崩壊。金融セクターも一時隆盛を誇ったが、それも08-09年の金融危機までの話だった。
物語は現在、ハイテクが人々の生活を一変させ、新型コロナウイルスのパンデミックによって、仕事であろうが娯楽であろうが、オンラインを通じた活動や自動化が加速するという章に差し掛かっている。これは企業収益から確認可能だ。リフィニティブのデータに基づくと、S&P総合500種銘柄の第2・四半期利益は平均で約33%減少したのに、ハイテクセクターは小幅増益を確保した。
この最近のハイテク株のバリュエーション高騰も、20年ほど前と同じように軽視はできない。1999年時点で、マイクロソフトの株価収益率(PER)は過去平均利益の80倍前後、シスコシステムズは190倍で推移。とりわけ投資家が妄想を抱いたのは、当時赤字だった大小のIT企業がやがて黒字になるという見込みだった。ところが多額の債務を抱えていた通信企業の投資の行き詰まりをきっかけに、そうしたバリュエーションは急降下してしまった。
今年の場合は対照的に、S&P総合500種銘柄で今年見込まれる利益の25%程度をハイテク企業が生み出す、とアナリストは予想する。アルファベット、アップル、フェイスブック、マイクロソフトのPERはいずれも過去12カ月利益の30-40倍で、そろって増益となる見通し。S&P総合500種全体の25倍前後というPERと比較しても、ITバブル時よりもずっと地に足がついている。
より不安なのは、「勝ち組」が一握りの銘柄に集中している状況だ。先の4社だけで、データストリームが算出した時価総額の2割近くに達する。これらの企業は検索からソフトウエアまでさまざまな分野を支配し、貴重なデータを収集することで人々の日常生活にすっかり根を下ろしている。少数の企業がこれほど大きな資金力と社会的影響力を握ることで、独占禁止法が適用されるという1つの大きな脅威が増大しつつある。まるで投資家は、わずかしかない高価なバスケットに、大量の卵を無理やり詰め込んでいるように見える。
●背景となるニュース
*リフィニティブ・データストリームによると、現在は米国大手企業の時価総額の31%をハイテク銘柄が占めている。
*データストリームでアマゾンが属するセクターを一般消費財からハイテクに変更したことで、こうした数字になった。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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