アングル:コロナ前に戻った日経平均、ワクチン期待が原動力

アングル:コロナ前に戻った日経平均、ワクチン期待が原動力
日経平均株価が、コロナ急落前の水準を回復した。ワクチン開発に対する期待感が世界的な株高の原動力となっている。写真は「ワクチン」のステッカーが付いた小さなボトルを2020年4月10日に撮影。(2020年 ロイター/Dado Ruvic)
水野文也
[東京 25日 ロイター] - 日経平均株価<.N225>が、コロナ急落前の水準を回復した。足元の実体経済は依然厳しいが、ワクチン開発に対する期待感が世界的な株高の原動力となっている。日本株は米株などと比べ出遅れ感があることから、好需給を背景にさらなる水準訂正を期待する声も市場では出ている。
日経平均は25日、一時400円を超える上昇となり、新型コロナの感染拡大で世界的な株安が広がる前の2月21日終値2万3386円74銭を上回った。
株高の背景にあるのは、ワクチン開発の進展によって世界的な経済回復が早まるとの期待だ。米食品医薬品局(FDA)が新型コロナ感染症から回復した人の血漿(けっしょう)を使った治療法の緊急使用を許可したことから、世界的に株価が上昇している。
トランプ政権が、英アストラゼネカとオックスフォード大が開発するコロナワクチンの緊急使用を許可することを検討しているとの報道も材料視され、24日の米国株式市場はS&P総合500種指数<.SPX>とナスダック総合指数<.IXIC>は前営業日に続き、終値で最高値を更新した。
日本株も25日は朝方から上昇。ワクチン開発への期待感に加え、国内でも新型コロナの新規感染者数の推移が落ち着いてきたことから、世界的なリスクオンの流れに乗る格好となっている。東海東京調査センター・シニアストラテジストの中村貴司氏は「世界の株高で日本株の出遅れが顕著となり、海外勢も持たざるリスクから日本株を買わざるを得なくなってきた」と指摘する。
東証によると8月第2週(8月11日─14日)の海外投資家による日本の現物株と先物合計の売買は9933億円の買い越し(前週は76億円の買い越し)と大幅な買い越しとなった。市場では「海外勢はひとたび日本株を買い始めると、その傾向がしばらく続く」(中村氏)との期待が大きい。
また「直近に発表された決算数値から買いを手控えた国内機関投資家も、このままではベンチマークに負けてしまうため、買わざるを得なくなる」(岡地証券・投資情報室長の森裕恭氏)と、「持たざるリスク」を指摘する声も聞かれた。
<仮需も改善>
仮需の動向も改善している。日経平均は約半年でコロナショック以前の水準まで回復したが、需給面でみると、2月高値の信用買いの期日を半年過ぎて通過した直後、つまり仮需の荷もたれ感が薄らいだ時点で、一気に上値追いの様相をみせたことになる。
空売りも3月安値の期日を9月に迎えることになるが、ここまで株価が上昇しているだけに、売り方は厳しい状態に置かれている。指数寄与度が大きいファーストリテイリング<9983.T>の信用倍率は0.71倍と売り残が買い残を大きく上回っており、株高が止まらなければ買い戻しによる踏み上げ相場となる可能性がある。
東京証券取引所がまとめた8月14日時点の裁定売り残は1兆6702億円と引き続き高水準。9月のSQ(特別清算指数)算出に向けてこの解消が急がれるようになれば、株高の要因になるとの見方もある。
一方、新たなリスク要因も浮上している。安倍晋三首相の健康問題だ。市場では「コロナへの対応が必要な現状では、誰が首相でも金融緩和や財政拡張の路線を変えることはできない」(国内証券)との見方が多いが、警戒感も出ている。
大和証券・チーフテクニカルアナリストの木野内栄治氏は「安倍政権は賛否がありながらも、株高に貢献してきた政策を取ってきたのは事実だ。政権が交代するとなると、ポストコロナを考えた場合、海外機関投資家が日本株に対して警戒感を抱くなるようになるかもしれない」と指摘、軽くみない方がいいと話している。

水野文也 編集:田中志保

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab