コラム:「物言う株主」の取締役入り、東芝にとり強みに
Alec Macfarlane
[香港 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 東芝<6502.T>は物言う株主の要求を強みに変えることができる。旧村上ファンド出身者が運営するシンガポールの投資ファンドで筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントが東芝に取締役を送り込むことを提案。これに対し、東芝は利益相反になると主張している。実のところ、筆頭株主を取締役会に参画させるのは、東芝、そして日本株式会社にとって自信を示すことになるのだ。
東芝は昨年5月、取締役会に外国人4人を入れ、より独立したものにした。不正会計問題や半導体部門売却、米子会社ウエスチングハウスの経営破綻に見舞われた同社の刷新の一環で、日本の島国的コーポレートガバナンスという観点から大胆な措置だった。
エフィッシモは、東芝をさらに前進させたいと考えている。今年、新たに子会社で架空取引が発覚したことを受け、エフィッシモは、自社の最高経営責任者(CEO)と外部の2人の計3人を東芝の取締役会に送り込む提案をした。東芝はこれに反対、米議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシズ(ISS)とグラス・ルイスもそれに同調した。ただし米議決権行使助言会社は違う理由で反対している。ISSは、取締役が15人というのは多すぎるとしている。
だとしても15%を保有する筆頭株主を非難し、要求をはねつけるのは哲学的に難しい。エフィッシモの目標は短期的で、東芝の経営陣のそれと比べると、他の株主の賛同を得にくいかもしれない。しかし東芝は強い立場にあって主張しているのでなく、抵抗することで一段と弱くなっているように見える。2018年11月に5カ年事業計画を発表して以降、総リターンは年率でマイナス4.9%で、TOPIXや同業を下回るパフォーマンスだ。
東芝がエフィッシモに歩み寄り、例えば取締役1人を受け入れたとしても、失うものはほとんどない。他の取締役は、その1人の取締役の提案に同意したり実行する義務はない。またエフィッシモの方もいろいろな意味で東芝と対立するのでなく調和を図る必要がある。
2019年1月、オリンパス<7733.T>は、物言う株主のバリューアクト・キャピタル・マネジメントから取締役を受け入れることに同意した。これも日本企業としては異例だったが、それからオリンパスの株価はほぼ倍になった。エフィッシモから取締役を受け入れれば、東芝の車谷暢昭社長がエフィッシモを脅威と考えていないというシグナルになり、相互にプラスとなる自信ある決断とみなされるだろう。
●背景となるニュース
*米ISS、東芝の取締役候補全員承認と投資ファンドの選任案反対を勧告
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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