焦点:米国務長官をクビにしたトランプ氏、政策停滞にいら立ち

[ワシントン 13日 ロイター] - トランプ米大統領が就任して間もなく1年2カ月になるが、この間ホワイトハウスは常に混乱のるつぼにあった。そして忠誠心を持つ人物が起用され、反対者は去り、トランプ氏自身は通商問題から対北朝鮮外交に至るまで、直観のおもむくままにこれまでになく迅速な決断を下している。
トランプ氏による13日のティラーソン国務長官更迭は、同氏が好ましいと考える政策を、当初自ら選んだアドバイザーがなかなか実行しない点に、いら立ちを強めていることを示す新たな証拠だ、と複数の側近は話す。
側近らの見立てでは、トランプ氏は引き続き政権中枢内で意見がぶつかり合うこと自体は歓迎するが、いったん決定を下した後は速やかに遂行してほしいと望むという。
トランプ氏の下でホワイトハウスのストラテジストを以前務めたアンドルー・スラビアン氏は「現在まで、ホワイトハウス内には健全なイデオロギー上の多様性が存在していると思う。しかし変わったのは、トランプ氏がもはや、部下たちがのろのろ仕事をしたり、自身が打ち出した政策の進行を妨害するのを、許さなくなっている点だ」と述べた。
ホワイトハウスの政策判断事情に詳しいかつてのトランプ氏の選挙陣営幹部も、トランプ氏は「活発な内部の論戦」が行われるのと同時に、最終決定に誰もが足並みをそろえることを期待していると説明する。
トランプ氏は先週、各方面からの反対にもかかわらず、鉄鋼とアルミニウムに高い関税を課し、輸入を制限することを正式に発表。通商やその他の問題で意見を異にしていたゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長が辞任する事態になった。
さらに韓国の特使と会ったトランプ氏は、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談に合意した。数カ月前には、必要なら北朝鮮の体制を「全面的に破壊する」と示唆していた。
その後、米国の対外政策をもっと穏健にするよう助言していたティラーソン国務長官は更迭され、後任にはトランプ氏への忠誠度が高いマイク・ポンペオ中央情報局(CIA)長官を充てる方針が、トランプ氏のツイッターで発表された。
トランプ氏の非公式アドバイザーになっているニュート・ギングリッチ元下院議長は「トランプ氏は自分が望む行動に大筋で同意し、なおかつ同氏をチームリーダーとして受け入れる人物を求めている」と指摘した。
 3月13日、トランプ氏(右)によるティラーソン国務長官(左)更迭は、同氏が好ましいと考える政策を、当初自ら選んだアドバイザーがなかなか実行しない点に、いら立ちを強めていることを示す新たな証拠だ、と複数の側近は話す。ワシントンで昨年12月撮影(2018年 ロイター/Jonathan Ernst)
<お手盛り内閣>
トランプ氏は記者団に「内閣やその他の事案は現在、私が望ましいと思う姿にかなり近づいている段階にある。マイク(ポンペオ氏)に関して、われわれは初めから非常に良好な関係を保ってきた」と語った。
トランプ氏と付き合いの長い人々の話では、同氏の大統領としての行動は以前のビジネスマン時代と変わっていない。
同氏の選挙陣営のストラテジストだったバリー・ベネット氏は「トランプ氏の考えを変えられると考えていた向きは、随分前にわれわれが選挙中に分かった事実を思い知っている。つまり彼の考えは変えられないのだ。トランプ氏をよりましにはできても、意見を180度ひっくり返せそうにはない。彼に何かしないよう説得する任務は『遂行不能』だ」と断言した。
トランプ氏はホワイトハウス運営を、以前に自分が進行役で出演していたテレビ番組と同列に扱っているとの批判も聞かれる。
民主党のパトリック・リーヒ上院議員は「ツイッターで国務長官をクビにするのは、劇的な演出やテレビの瞬間視聴率には役立つかもしれないが、今回も含めた枚挙にいとまがない同じようなこうした行為は(政治を)全く不安定化させ、国家とホワイトハウスのすべての職務レベルに打撃を与える」と厳しく意見した。
閣僚の交代はまだ続き、トランプ氏はコーン氏の後任のNEC委員長をこれから発表する。ギングリッチ氏は、コーン氏よりも「ウマが合う」人物を起用すると予想した。トランプ氏は、保守派コメンテーター、ラリー・カドロー氏が最有力候補だとほのめかしている。
それだけでなくジョン・ケリー大統領首席補佐官やハーバート・マクマスター大統領補佐官(安全保障担当)などもトランプ氏と意見が衝突したことがあり、一連の経緯やトランプ氏が人事刷新に言及している点からすると、ホワイトハウスを去る可能性がある。
(Jeff Mason、James Oliphant記者)

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