コラム:トランプ氏のツイッター、FRBや雇用統計しのぐ存在感

コラム:トランプ氏のツイッター、FRBや雇用統計しのぐ存在感
8月2日、トランプ米大統領によるツイッターを通じた発言は、今や米連邦準備理事会(FRB)や雇用統計さえ目立たなくさせてしまうほどの存在感を発揮しつつある。写真はニュージャージー州モリスタウンに到着したトランプ氏(2019年 ロイター/Yuri Gripas)
Gina Chon and Jennifer Saba
[サンフランシスコ/ニューヨーク 2日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領によるツイッターを通じた発言は、今や米連邦準備理事会(FRB)や雇用統計さえ目立たなくさせてしまうほどの存在感を発揮しつつある。
トランプ氏は1日、3000億ドル相当の中国製品に対して新たに10%の輸入関税を適用すると表明した。実行されれば、事実上中国からの全輸入品に追加関税が課せられる。この対中追加関税「第4弾」の方針は、FRBが7月31日に決めた10年半ぶりの利下げよりも市場を混乱させた。2日に発表された7月雇用統計も、特に驚くような内容でなかったこともあり、影が薄くなってしまった。
トランプ氏は、中国政府が2つの約束を果たしていないと批判した。米農産物の購入拡大と、医療用麻薬「フェンタニル」の販売停止だ。フェンタニルについては、米国内で広がるオピオイド乱用の中毒問題が念頭にある。この2つはトランプ氏の支持層にとって大事な問題なのだ。一方、対中関税第4弾をトランプ氏がつぶやいたことで、S&P総合500種は1日に約1%下落し、モルガン・スタンレーによると米国債の価格は過去1年余りで最大の上昇率を記録。投資家が安全資産に殺到した様子がうかがえる。
FRBのパウエル議長も次の一手を説明しようとする中で、いくらか市場のボラティリティーを高めたが、今後にとってより重要なのはトランプ氏の通商政策の方向性だ。これまでの同氏のいくつかの行動を見ると、中国との合意を切望していることが分かる。1日には香港の逃亡犯条例改正に対する抗議活動を「暴動」と切り捨て、中国政府が取り締まることを実質的に容認した。トランプ政権は台湾への80億ドルの戦闘機売却を凍結したし、追加関税第4弾に関しても発動時期を9月1日と猶予を持たせている。以前にもトランプ氏は関税をちらつかせた後、結局適用を延期した。
トランプ氏がこの先どう進むかはさらに、来年の大統領選に影響してくる。同氏が目指しているのは、過去最悪の破綻件数に見舞われている農家への支援強化だ。米農務省のデータでは、2019会計年度の中国向け農産物輸出は、オバマ前政権時代の平均的な水準に比べて7割程度も減少すると見込まれている。
トランプ氏と中国の習近平国家主席が繰り広げる貿易戦争は、双方の敵対が続くだけでなく、不確実性を生み出し、それがFRBが予防的に利下げに動いた一因になった。また7月の米失業率は横ばいだったとはいえ、製造業などいくつかの分野は前年よりさえない数字になっている。米製造業同盟(AAM)は、ホワイトハウスの「失策」と「一貫しない通商政策」がその原因だと批判した。
ともあれトランプ氏の予測不能なつぶやきは、FRBの声明や雇用統計に代わる新たな注目材料と言える。
●背景となるニュース
*トランプ米大統領は1日、ツイッターで9月1日から中国製品3000億ドル相当に10%の追加関税を課すとともに、中国の習近平国家主席が早期に貿易協議に合意しなければ、関税率をさらに引き上げる可能性があると表明。S&P総合500種は約1%下落し、米国債相場は上昇(利回りは低下)した。
*米商務省が2日発表した上半期統計によると、米国の貿易相手は2005年以降で初めてメキシコが中国を抜いて首位に立った。
*米労働省が2日発表した7月の非農業部門雇用者数は前月比16万4000人増加し、失業率は横ばいの3.7%だった。
*FRBは7月31日に終わった連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を2─2.25%に引き下げた。利下げは2008年以来。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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