アングル:ロシア兵器購入のトルコ、制裁回避はトランプ氏頼み

アングル:ロシア兵器購入のトルコ、米制裁回避はトランプ氏頼み
 4月19日、トルコはロシア製ミサイル防衛システム「S400」の購入を巡り米国から制裁を科されるのを回避する上で、トランプ米大統領(写真左)による介入頼みの様相を強めているようだ。写真はブリュッセルで2018年7月、トランプ氏と話すトルコのエルドアン大統領。代表撮影(2019年 ロイター)
[アンカラ/ワシントン 19日 ロイター] - トルコはロシア製ミサイル防衛システム「S400」の購入を巡り米国から制裁を科されるのを回避する上で、トランプ米大統領による介入頼みの様相を強めているようだ。
ただ、トルコに批判的な米議会の決定を、大統領が覆せる余地は非常に乏しい。
トルコがS400を発注したことについて、米国はトルコが加盟する北大西洋条約機構(NATO)の体制と相入れないと批判。S400を購入するなら米最新鋭ステルス戦闘機F35をトルコに売却しないと表明している。
ポンペオ米国務長官と著名米上院議員らは、法律に則りトルコに制裁を科すと警告した。
S400の到着を2カ月後に控えた14日の週、トルコの閣僚らは米首都ワシントンを訪問し、期せずしてトランプ氏との面会を果たすこともできた。
トルコ高官はロイターに「トランプ氏は議会より前向きな姿勢だという感触を得ている。何らかの措置が採られる可能性が確実にある。ただ、合意の模索は続くだろう」と話した。
シャナハン米国防長官代行は18日記者団に対し、会談を経てS400問題の最終決定に「近づいた」と述べた。
会談の詳細は明らかになっていないが、トルコのメディアによると同国のアルバイラク財務相は、トランプ氏が「トルコがS400を必要
としていることについて、よく分かってくれている」と述べた。
<制裁ならリラ下落か>
トルコは米国から小規模な制裁を科されるだけでも通貨リラが再び急落し、景気後退が深まる恐れがある。リラは昨年30%も下落した後、ことしさらに10%下げ、市場はきわどい状態が続いている。
米国で2017年に成立した「敵対者に対する制裁措置法(CAATSA)」では、ロシアから軍事設備を調達する国に制裁を科すことが定められている。
議会がCAATSAに基づきトルコへの制裁を可決した場合、トランプ大統領としては、S400の購入が「重大な取引」ではなく、NATOの一体性を脅かしたり米国の軍事行動に悪影響を及ぼさないことを示せない限り、制裁を撤回することができない。
大統領はまた、議会委員会への書簡で(1)S400の購入は米国とトルコの協力関係に「大きな悪影響」を及ぼさない(2)トルコが一定期間内にロシア製防衛設備・武器を減らす措置を講じる──の2点についても説明する必要がある。
エルドアン・トルコ大統領の広報は、トランプ氏が2カ月前にエルドアン氏への電話で、この問題の解決策を探ると約束したのを聞いたと述べた。他の高官らも、トランプ氏はトルコに同情的だと説明している。
ただ、トルコがトランプ氏を味方につけたとしても、両国が長年の緊張関係を脱して共通の土台に立つのは難しいかもしれない。
両国は過去数年、シリア紛争における軍事戦略や対イラン制裁、在米イスラム指導者ギュレン師の身柄引き渡し問題などを巡り、対立を繰り返してきた。
このため米議会にはエルドアン氏の支持者がほとんどおらず、仮にホワイトハウスが制裁撤回に動いたとしても、別の制裁法を成立させる可能性がある。
ザ・ワシントン・インスティテュートのトルコ問題ディレクター、ソナー・カガプタイ氏は「トルコの制裁免除が不可能だとは思わない。しかしワシントンにはトルコを応援する勢力が無きに等しいため、険しい道のりになるだろう」と語った。
(Orhan Coskun記者 Humeyra Pamuk記者)

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