コラム:米ウーバー、アマゾンの対極に位置する理由
Robert Cyran
[ニューヨーク 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズはアマゾン・ドット・コムとは別物だ。
報道によると、ウーバーの新規株式公開(IPO)投資家説明会では、同社を米インターネット通販業界の巨人、アマゾンになぞらえる発言があった。足元の巨額赤字は、儲かる巨大企業へと成長していくための礎になる、との理屈だ。
しかし損益計算書ではなくキャッシュフローに着目すれば、ウーバーとアマゾンとの違いが鮮明になる。
ダラ・コスロシャヒ氏率いるウーバーは膨大な赤字を出している。2009年の創設以来の累積赤字は2018年末時点で79億ドルに達した。今年第1・四半期決算も10億ドルの赤字と推計されている。
ウーバーが描いているのは、ドライバーへのインセンティブや顧客への値引きによって成長を後押しし、「勝者総取り」の配車市場で絶対的な優位を確立するというシナリオだ。いったん市場を手中に収めてしまえば、料金を引き上げたりドライバーへのインセンティブを縮小することが可能になる。また自動運転車が登場した暁には、ドライバーを廃止して利益率を大幅に向上させることができる。
創業後に大きな赤字を抱えた点では、ウーバーをアマゾンと並べるのはつじつまが合う。アマゾンは四半期ベースでの黒字転換に7年程度掛かり、創業後の赤字を一掃するまで赤字が積み上がるのに、さらに十数年を要した。
しかしアマゾンは外部資金を調達する必要がほとんどなかった。設立当初の調達額は1000万ドル弱、株式上場時の調達額は5000万ドル余りで、「ドット・コム」ブームの最中に20億ドルほどの転換社債を発行するにとどまり、資本需要が比較的小さかった。
これはアマゾンがプラスのキャッシュフローでほとんどの成長を賄ったからだ。アマゾンの経営モデルでは、まず顧客が代金を支払い、大半のベンダーへの支払いはその後となる。アマゾンは1997年の株式公開後に最初の四半期からキャッシュを生み出し、2002年以来、年間キャッシュフローは常にプラスを維持している。
これに対してウーバーは過去3年間で60億ドル近いキャッシュを消費し、近い将来この流れが変わるという見通しは立たない。リフトなどライバルとのシェア争いは激しく、食事配送や貨物など新分野への事業拡大に伴って研究・開発費がかさんでおり、「現金燃焼」は加速しそうだ。最新の目論見書案によると、ウーバーはIPO後にネットキャッシュが100億ドルを超える見通しだ。しかしキャッシュを貪欲に食い尽くす経営体質を持つという点で、ウーバーはアマゾンの対極に位置している。
●背景となるニュース
・報道によると、ウーバーのIPOは9日に公開価格が決まり、10日から市場で株式の取引が始まる。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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