コラム:米ウーバー、二輪サービスに社運を賭けるか
Richard Beales
[ニューヨーク 3日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ニュースサイト「ザ・インフォメーション」によると、米配車大手ウーバー・テクノロジーズは、バードやライムといった電動スクーターレンタル事業者への出資もしくは完全買収を望んでいるようだ。
新規株式公開(IPO)を目指すウーバーにとって、二輪サービス事業の強化は赤字体質という大きな課題を乗り越える助けになりそうだ。ウーバーの社運は四輪ではなく二輪に掛かっているのかもしれない。
10月の米紙ウォールストリート・ジャーナルがダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)の発言として伝えたところによると、ウーバーは2019年にIPOを実施する予定で、目指す企業評価額は最大1200億ドル。私募調達頼みの体制を脱する大きな一歩だ。ウーバーは孫正義氏率いるソフトバンク<9984.T>など資金面で有力なバックを持つが、それでも「いまだに黒字転換できない」という大きな問題を抱える。
第3・四半期決算は配車サービスの予約額が127億ドルと前年同期比41%増えたが、純損失は10億ドル余りの損失。電動自転車サービス「バイク」などのサービスに投資してはいるが、中国など厳しい市場で事業を売却し、赤字を縮小した後にしては大きな赤字だ。
クランチベースによると、電動スクーター市場でトップを走るバードとライムは今年それぞれ4億ドル強を調達し、企業評価額は数十億ドル規模を目指す。配車サービスは多くが1マイルや2マイルといった短い距離の利用が多く、都市部で電動スクーターと相性が良い。報道によると二輪サービス事業は利用1回当たりの収入が平均4ドルと少ないが、四輪配車サービスのように売り上げの大半をドライバーに支払う必要はない。
二輪サービス事業者も電動スクーターを購入する必要がある。車両購入コストのほか充電施設網や会員制度の整備、スクーターが散らかすごみや安全確保、その他を懸念する都市での事業認可獲得など、課題が山積みだ。さらに少なくとも足元では競争が激化している。黒字化は容易ではない。
しかし電動スクーターの購入コストが下がり、バッテリー技術が進歩しているため、二輪サービスを取り巻く状況は変わり得る。また二輪サービスは、完全自動運転車の実用化まで黒字転換がほぼ不可能な四輪サービスの事業モデルに比べれば困難が小さい。
ウーバーが電動スクーターサービスを拡大すれば、短期的には自社の四輪サービスの需要を食うことになるかもしれない。だが黒字化への進展が進むなら、二輪サービスは厄介ものではなく特色になるだろう。
●背景となるニュース
*ハイテク関連ニュースサイト「ザ・インフォメーション」は11月30日、関係筋の話として、ウーバーが最近、電動スクーターのレンタル事業を手掛ける米新興企業バードの買収に向けて話し合いの場を持ったと報じた。ウーバーはバードと同業ライムとも買収交渉を行ったという。
*クランチベースによると、バードとライムはいずれも今年に入って4億ドル余りを調達している。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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