コラム:コロナバブルで米社債起債が空前の活況、恩恵は投資銀に

コラム:コロナバブルで米社債起債が空前の活況、恩恵は投資銀に
6月8日、債券投資家が、新型コロナウイルス感染流行による制限措置で売り上げが急減した企業を破綻から救う助けとなるべく、めざましい意欲を見せている。ニューヨークのウオール街で3月撮影(2020年 ロイター/Carlo Allegri)
Antony Currie
[ニューヨーク 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 債券投資家が、新型コロナウイルス感染流行による制限措置で売り上げが急減した企業を破綻から救う助けとなるべく、めざましい意欲を見せている。今年に入ってから米投資適格級企業の社債発行額は約1兆1000億ドルに達し、既にほぼ昨年全体並みになっている。投資不適格(ジャンク)級社債の活況もしかりだ。
当局からもたらされた大量の資金、さらに低金利にも背中を押された債券の買い手と売り手も、実は今後の景気回復がおぼつかないというリスクにさらされている。
しかし、唯一、前代未聞のチャンスをつかんでいるグループがある。それが投資銀行だ。
投資銀行にとって、条件はほぼ完璧だ。案件は次から次へと出てくる。余分なキャッシュを必要としているようには見えない企業さえも起債に動く。
米連邦準備理事会(FRB)自身の利下げのみならず、FRBと議会がこぞって打ち出した経済対策による資金によって、市場金利は急激に低下。企業もにわかに元気が出ている。
加えて資産管理担当者には、大量の資金が積み上がっている状態。リフィニティブ・リッパーによると、4月半ば以来、課税債型ミューチュアルファンドだけで約630億ドルの資金流入があった。米金利の低下でドルのコストが低くなり、ドル建て社債は欧州やアジアの投資家にとっても魅力的になった。
その結果、リフィニティブのデータによれば、米投資適格級社債の発行市場は今年4月、5月、3月の順で歴史的に活況な月が続いた。起債総額はそれぞれ少なくとも2460億ドルに上り、これまで最高だった2016年5月を40%以上も上回った。
こうしたことは、売上高の大幅減少ないし、売り上げが全く立たないという数カ月間をどのように乗り切るか資金繰りに頭を悩ませる経営陣を楽にするだろう。
しかし、これは将来、落ち込むかもしれない落とし穴も作り出しているのだ。多くの企業は今や、借り入れを膨張させ、収入がいつ、どれだけ再び流れ込み始めるか、ほとんどわからない状況だからだ。こうした状態が長引くほど、企業の格下げや債務返済の問題のリスクも高まる。
投資家もこうしたリスクを、さらに低下していくリターンとともに引き受けている。投資する社債企業の信用リスクも高まっている。今年に入ってから起債された投資適格級社債のうち、格付けがぎりぎりの「トリプルB」は半分近くもあった。一方で、アマゾンの前週の「シングルA」の3年物社債の表面利率はわずか0.4%と、記録的な低さだった。
だが、リターンが低過ぎることや借り入れが多過ぎることを巡るどんな懸念も、投資銀行にとってはどこ吹く風だ。投資銀行の今年の債券引き受けは、かつてない活況を呈しつつある。首位を行くJPモルガン・チェースは第1・四半期の債券引受手数料による収入が過去最高になった。この記録もすぐに破られそうだ。
●背景となるニュース
*リフィニティブのデータによると、米社債市場は年初来の投資適格級債の発行額が約1兆1000億ドルと、記録的な水準になっている。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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