コラム:米中の我慢競べ、先に音を上げるのはトランプ氏
Gina Chon
[サンフランシスコ 24日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米中両国の我慢比べは、トランプ大統領が先に音を上げることになるだろう。トランプ氏は今週の20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)で、中国の習近平国家主席と会談し、貿易協議の再開を目指す。トランプ氏は中国の譲歩を期待するかもしれないが、合意の必要性が高いのはトランプ氏の方で、習氏は対決姿勢を崩していない。
トランプ氏と中国の立場は逆転し、今や自らが積極的に動いて、習氏をG20サミットにおける首脳会談に引き出す役回りになっている。さらにトランプ氏は、そうした取り組みを阻む恐れがあった動きを抑え込んだ。例えばペンス副大統領は、対中強硬論を盛り込んだ演説を2回も延期した。
関税をちらつかせて相手に譲らせるのがトランプ氏流の交渉術で、今月にはメキシコが米国から全輸入品に関税をかけると示唆されると、不法移民の米国流入阻止を強化すると約束した。ところが中国は強腰を保ち、こうしたやり方は通用しなくなった。
中国も当初は妥協を模索したのだが、その後態度を一変させている。最近ではレアアース(希土類)の米国向け輸出禁止をにおわせたり、市場ルールに従わない外国企業を掲載する「信頼できない企業リスト」を策定中だと明らかにした。また米フォード・モーターの中国合弁企業に対して、独占禁止法違反で2360万ドルの罰金を科している。
こうした中国側の「反撃」によって、トランプ氏は自身が望む「ディールメーカー(交渉を通じて有利な条件を獲得できる人)」を演じられそうにない。対中貿易摩擦が米経済に及ぼす悪影響が日増しに大きくなっていることも重圧となりつつある。イリノイ、インディアナ、ウィスコンシンの各州では昨年、農家の破綻件数が2008年の2倍にも達し、米国の酪農業は中国の市場シェアを50%も失った。エンジン製造のカミンズは、さまざまな関税のために17年の減税がもたらしたメリットが消えてしまうと悲鳴を上げる。
時間もトランプ氏の味方ではない。来年の選挙が近づいていることから、同氏は3000億ドル相当の中国製品に新たな関税を課す提案を棚上げするのが得策になった。米連邦準備理事会(FRB)が来年の成長率を2%と予想する中、トランプ氏は、中国の知的財産権侵害や技術移転強要といった慣行の是正を迫るという重要な項目を含まない合意を受け入れざるを得ないかもしれない。同氏が勝利だと強弁するとしても、それは実に内容のない「成果」にすぎないだろう。
●背景となるニュース
・トランプ米大統領は18日、G20大阪サミットで中国の習近平国家主席と会談すると表明した。5月に中国が貿易協議でいくつかの重要な合意事項を土壇場で覆したと米政府が非難して以来、両国の協議は停滞している。
・これまで米国は約2500億ドルの中国製品に関税を課している。米通商代表部(USTR)は、さらにおよそ3000億ドル相当にも関税を導入することを検討中だ。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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