コラム:コロナ打撃の米景気対策、減税より現金支給を
Gina Chon
[サンフランシスコ 10日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 苦境にあえぐ米国にとって有効な対策は、減税より現金かもしれない。トランプ米大統領は新型コロナウイルスの感染拡大による景気への影響を和らげるため、お気に入りの対策である減税を提案した。しかし個人消費のてこ入れが狙いであれば、現金を直接支給する方が効くだろう。
トランプ氏は10日、給与税を一時的に免除する案を上院議員に説明した。タックス・ファウンデーションによると、年間所得4万ドルの人の平均税率は8.8%で、トランプ氏の案が4月から12月まで実施された場合、そのコストは推計約9000億ドルになる。
こうした減税は通常、生ぬるい効果しか持たない。トランプ氏の案では、そうした年間所得4万ドルの人は、年に24回給与が支払われると想定した場合で1回当たりの給与が146ドル増えることになる。2017年の共和党減税に、米国民がさほど感銘を受けなかったのはこのためだ。
タックス・ポリシー・センターによると、18年には国民10人中約8人への課税が減ったが、所得が下から60%の層では、その年の減税規模が平均1000ドルに満たなかった。NBCニュースとウォールストリート・ジャーナル紙が同年実施した調査によると、納税者の約60%が、納税額は変わらないか増えると受け止めていた。
現金支給の方が効果は大きそうだ。オバマ前政権下で経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたジェイソン・ファーマン氏は、成人1人当たり1000ドル、子ども1人当たり500ドルを1回限り支給する措置を提案した。同氏の推計では、費用は3500億ドルだ。こうすれば給与支払いが途絶えた労働者を支援できる。最高所得層は対象外としてもよい。香港政府も住民への現金支給を提案した。
現金が支給されれば最低所得層は生活必需品の支払いを賄え、その他の人々は裁量的な支出に回すかもしれない。サプライチェーンの混乱で既に痛手を被っている飲食店や小売りなどの事業にとっても支援となる。
個人消費は米経済の約3分の2を占めており、昨年は設備投資の減少を補って、国内総生産(GDP)伸び率は2.3%に達した。
個人消費は、新型ウイルスの感染拡大自体に比べれば小さい問題だ。しかしトランプ氏が真っ先に対処したいのが個人消費であれば、適切な方法を選ぶべきだろう。
●背景となるニュース
*トランプ大統領は10日、上院共和党指導者らと会い、景気対策の選択肢を協議した。大統領は給与税の税率を一時的にゼロとする意向を告げた。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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