コラム:米中間選挙、民主党の「青い波」が起きなかった訳
Lincoln Mitchell
[7日 ロイター] - 2018年の米中間選挙は、下院選の投票者数が過去最高の推計1億1400万人に上るなど記録ずくめで、世界各地から大統領選並みの注目を集めた。
今後のトランプ大統領の政権運営を大きく左右する重大なイベントで、投票日間際にもトランプ氏の政敵に爆発物が送りつけられたり、ピッツバーグのユダヤ人教会堂で発砲事件が起きるなど波乱が続いた。
しかし結局のところは野党・民主党が下院の過半数を奪回するというありきたりな結果に終わり、多くの民主党支持者が期待した「ブルーウェーブ(青い波)」は起きなかった。
民主党は下院の議席を改選前から30議席ほど増やし、上院で失った議席はわずかだったが、最近の中間選挙に照らして「大勝」とは言えない。原因は米国の景気にあった。青い波は好調な米経済という陸地にぶつかり、砕け散った。
20年から30年前に政治学の講義を受けていて、2016年の大統領選は共和党候補が勝ち、景気は極めて好調とだけ聞かされた人は、ほぼ実際通りの投票結果を予想しただろう。注目度が低く、対立を煽るような言い回しをする人物が大統領に就いていないこれまでの中間選挙は同じ結果だった。中間選挙が平凡な結果となったとことで、あらゆる尺度から流動化が読み取れても、投票の行動と結果にそれが表れないという、米国政治の矛盾が露わになった形だ。
共和党が伝統的な保守政党からポピュリズム政党へと脱皮しつつある一方、民主党は都市周辺地域で新たな支持を見出している。米国の民主主義の規範を次々と打ち壊し、3年以上にもわたりその立ち振る舞いがメディアを席巻してきた大統領は、ほとんどすべての大統領と同様に、選挙のときに自分の政党の命運を決めるのは、重要ではあるがかなり世俗的な問題、つまり米国の景気だと理解した。
ほぼすべてに当てはまるわけではないとしても、米国民の多くが依然、党派性に投票が左右さていることも明らかになった。投票先が揺れ動くオハイオ州コロンバス周辺では選挙戦終盤に多くの共和党有権者が、オハイオ州のアメフトチームを応援するの同じような調子で「自分は共和党員だから」と投票理由を説明するのを聞いた。こうした党派性の根深さ故、波が来るチャンスは小さく、選挙はいつでも接戦となる。
今回の中間選挙の結果は、民主・共和両党とも有権者の判断を動かし得るが、激しい動揺が起きたようにみえても米国民の政治に対する基本的な態度は、少なくともその一部は、変わっていないということを浮き彫りにした。
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