コラム:正念場の米経済、一段のショック発生なら景気後退も
John Kemp
[ロンドン 19日 ロイター] - 米経済は昨年第4・四半期に大幅減速し、12月に大きく揺らいだ。このまま悪化の一途をたどるか、あるいは持ち直すか正念場を迎えているため、中国との貿易摩擦激化など、これ以上の衝撃に耐える余裕は失われている。
米運輸統計局(BTS)によると、道路、鉄道、航空、船舶、パイプラインを通じた12月の貨物輸送は前月比3%減と、2009年3月以来の大幅な落ち込み。前年比も1.4%増と、この2年余りで最低の伸びにとどまった。
全米トラック協会のまとめでは、昨年半ばから勢いを失いつつあったトラック輸送は12月に4%余り減少し、約7年ぶりの不振を記録。港湾当局が発表したロサンゼルスやロングビーチなど主要な港のコンテナ輸送も急激に落ち込んだ。
輸送量減少は、製造業セクターが年末にかけてソフトパッチ(足踏み)状態は入ったことを示す他のデータと整合的だ。1月鉱工業生産指数は昨年10月に付けたピークから3カ月連続で悪化し、3%以上も下落。12月のISM製造業景気指数も世界金融危機後で最大の低下幅となった。
この数カ月、市場では金融資産が値下がりし、企業景況感が悪化しているのに統計はしっかりしており、両者の間にかい離がみられるとの指摘が一部から出ていた。しかし統計には遅行性がある。第4・四半期には米株式市場が下落してイールドカーブがフラット化し、それに一致する形で統計の数値も米経済が昨年末に急速に冷え込んだことが分かる。
重要なのは、昨年末に生じた輸送量や製造業活動の落ち込みが短期のソフトパッチで終わるか、持続的な景気悪化ないし景気後退に進むかどうかだ。
株価が1月に力強く上昇し、IMS製造業景気指数も前月の低下分を一部取り戻しており、景気拡大がさらに続くことが読み取れる。しかし両者とも昨年10月以前の水準には届いていないし、イールドカーブに大幅なスティープ化は起きておらず、景気の勢いが一段と失われ、景気後退入りのリスクが高まっている様子がうかがえる。
つまり手元の金融市場の動きや経済統計は、景気が緩やかな成長の持続と景気後退入りの分かれ道にあることを示している。
景気後退は景気拡大と同様に、初めの小さな動きが加速度的に大きな動きに広がる「ポジティブフィードバック」のメカニズムを内包しており、今後2、3カ月の動きが鍵となる。
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