アングル:ジャクソンホール、トランプ政策に批判的意見続出

アングル:ジャクソンホール会合、トランプ氏の政策に批判続出
8月25日、米カンザスシティー地区連銀がワイオミング州ジャクソンホールで開いた年次経済シンポジウムに集まった主要中央銀行当局者や有力エコノミストの間では、トランプ大統領の名前自体はほとんど言及されなかったものの、同氏が掲げる政策に対する批判的な意見が相次いだ。写真はホワイトハウスで25日撮影(2017年 ロイター/Yuri Gripas)
[ジャクソンホール(米ワイオミング州) 25日 ロイター] - 米カンザスシティー地区連銀がワイオミング州ジャクソンホールで開いた年次経済シンポジウムに集まった主要中央銀行当局者や有力エコノミストの間では、トランプ大統領の名前自体はほとんど言及されなかったものの、同氏が掲げる政策に対する批判的な意見が相次いだ。
米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は、トランプ氏が推進する金融規制緩和と経済の「米国第一主義」について、10年前の金融危機が経済に与えた打撃の大きさを挙げて反論を展開。「一部の人々からは記憶が消失しつつあるのかもしれない。つまり金融危機がいかに多大な犠牲をもたらし、なぜいくつかの対策が講じられなければならなかったのかという記憶だ」と語り、現在の規制体系の修正は小幅にとどめるべきだと訴えた。
ユーロ圏からやってきた欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、自由貿易の意義やトランプ氏が攻撃する国際機関の機能を強めることへの支持を表明した。
ドラギ氏は昼食会における講演で、世界貿易機関(WTO)や20カ国・地域(G20)体制の基盤強化を正当化するとともに「保護主義への転換は、生産性が伸び続けるのを妨げるリスクがあり、世界経済の潜在成長力を脅かしかねない」と警告した。
グローバル化に付随する問題がメリットを過剰に覆い隠していると考えている各中銀当局者や主流派のエコノミストは、トランプ氏の登場や英国民投票の欧州連合(EU)離脱賛成など反グローバリズムが広がる流れに懸念を深めている。
これらの問題の解決策は金融政策の範囲を超えているとはいえ、保護主義の新たな波や向う見ずな規制緩和は、せっかく安定して成長軌道に戻っている世界経済の脅威になりかねないからだ。
貿易に関する討論会では、トランプ氏の姿勢に対するより直接的な懐疑論が聞かれた。中銀当局者やエコノミストによると、トランプ氏がひたすら焦点を当てているように見える貿易協定の見直しでは、事態は解決しないという。
ペンシルベニア大学のアン・ハリソン教授は「北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉や中国に対する保護主義的な装置は米国の雇用を救うことにならない」と指摘。製造業の雇用減少は、省力化経営と技術のためだと主張している。
エコノミストからは、本来は職業技能改善や国内投資促進、失職した労働者向けの安全網整備といった政策に目を向けるのが望ましいが、こうしたミクロレベルの取り組みは体系化や予算付けが難しくなる面があり、結果が出るまでに時間がかかってしまうとの見方が出ている。
ハリソン氏は「中国をたたく方がずっと安易だ」と話した。
(Howard Schneider、Jonathan Spicer記者)
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