アングル:大統領候補争い、民主バイデン氏は「最弱先頭走者」

アングル:大統領候補争い、バイデン氏は「最弱の先頭走者」
 9月2日、2020年の米大統領選に向けた野党・民主党の候補指名レースは、秋の訪れとともに一段と活発化しつつある。写真アイオワ州で支持者と写真を撮るバイデン氏(左)。8月7日撮影(2019年 ロイター/Scott Morgan)
[ワシントン 2日 ロイター] - 2020年の米大統領選に向けた野党・民主党の候補指名レースは、秋の訪れとともに一段と活発化しつつある。それに伴って引き続き支持率はトップながらもいくつかの弱点を抱えるバイデン前副大統領は、今後さらなる試練に直面しそうだ。
バイデン氏の陣営にとっては、76歳という同氏の年齢や大統領としての適性に対する疑念、または左傾化が強まる民主党にあって穏健派として党の意見を代弁できるのか、といった声が出ていることが悩みの種になっている。
候補指名争いは、アイオワ州で民主党の最初の予備選が実施される来年2月まで5カ月となるレーバーデーを境に、熱気が高まるのが通例だが、イデオロギーや世代の面でばらばらになっている党を結束させられる真の候補は今回まだ登場していない。
バイデン氏は副大統領や上院議員を務めたことによる知名度が有利に働いてきたものの、有権者が他の候補に関心を向け始めるとともに苦境に陥る、と複数のストラテジストは分析する。
こうした有権者の姿勢を背景に、バーニー・サンダース上院議員やエリザベス・ウォーレン上院議員といったバイデン氏を僅差で追う候補が勢いをつかむ機会が広がってきている。
2016年に民主党の大統領候補に指名されたヒラリー・クリントン氏の陣営で働いていたジョエル・ペイン氏は「バイデン氏は長年続いてきた候補指名争いにおいて最弱の先頭ランナーだ」と指摘。これまでのバイデン氏の優勢は、選挙戦におけるパフォーマンスの良さというより有権者に名前が知られているという部分が大きかったと付け加えた。
ただし道のりは長い。民主党のストラテジスト、デラシー・スキナー氏は「大半の有権者はほとんどの候補者についてまだ知らない」と話す。アイオワ州の同党ストラテジスト、ジェフ・リンク氏も、予備選をアメリカンフットボールの試合になぞらえた上で、レーバーデーは後半の始まりにすぎないと説明し、「唯一重要なのは(選挙戦最終盤の)第4クオーターだ」と強調した。
現時点でバイデン氏は、対立候補からの攻撃や自らの失策を何とか乗り切って一番手の地位を守っている。しかし一連の失言や記憶違いなどから、年齢の高さや民主党候補としてトランプ氏と渡り合っていけるかどうかの不安が高まっている。
左派色が濃くなりつつある民主党にあって、もはや穏健派のバイデン氏は主流ではないとの声も聞かれる。
バイデン氏以外の候補に目を向けると、これまでに頭角を現してきたのはウォーレン氏で、過密と言えるほどの日程と非常に強固な州レベルの組織を武器に、指名争いに本格的に加わる存在になった。特にバイデン氏がトランプ氏の対抗馬に最もふさわしいと証明するために勝利を望んでいるアイオワ州で、ウォーレン氏がライバルとなりつつある。
ウォーレン氏には、自らが「大きな構造的変化」と呼ぶリベラル的な政策案について支持を広げられるかという疑問が付きまとうが、スキナー氏はサンダース氏などの左派系候補だけでなく他の候補の支持層も取り込めるとの見方を示した。
<一発逆転も>
いずれの有力候補も、深刻に分断された民主党を再び団結させてトランプ氏に勝利できるかどうかは分からないとみなされている。
「民主社会主義者」と名乗るサンダース氏の場合、クリントン氏に肉薄した16年の選挙と比べると支持率は低い。カマラ・ハリス上院議員は6月の第1回討論会で一時脚光を浴びたとはいえ、その後は人気が低下している。インディアナ州サウスベンド市長のピーター・ブティジェッジ氏も、当初メディアの注目を集めた半面、国政経験の無さを巡る懸念が根強く、市政における人種問題の扱いが批判を受けて黒人層の支持獲得に苦戦中だ。
16年にトランプ氏が辛勝した激戦地域のウィスコンシン州で民主党のストラテジストを務めるジョー・ゼペキ氏は、選挙戦のこの時期までにはだれもが「傷」を暴かれる以上、全ての候補者に欠点があるのはいつものことで、最終的に指名された候補の下で党は1つになると自信を示した。
それはその通りかもしれないが、今最も優位に立つバイデン氏に年齢や資質の面で疑問がくすぶる状況は、民主党が今回、2000年のアル・ゴア氏や04年のジョン・ケリー氏、08年と16年のヒラリー・クリントン氏などのような「安心できる」候補者に恵まれないことを意味する。
アイオワ州のストラテジストのリンク氏は、20年の候補指名レースはなお流動的で、コリー・ブッカー上院議員やベト・オルーク元下院議員ら支持率が低い人々にも一気に浮上するチャンスは残っているとみている。
リンク氏は、各候補者にとって現時点での目標は組織作りであり、終盤にペースを上げるべきだと主張した。
(James Oliphant記者)

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