コラム:米失業者数、大恐慌以来の水準に上昇か それも短期間に
Jennifer Saba
[ニューヨーク 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国では新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるために店舗等が閉鎖されており、失業者数が未曽有の水準に達する恐れが生じている。
14日終了週の新規失業保険申請件数は28万1000件と、2年半ぶりの高水準を記録。ゴールドマン・サックスは、21日終了週には過去最多の約230万件に跳ね上がると予想している。ムニューシン米財務長官は議員らに対し、失業率が1929年から始まった大恐慌以来の20%に上昇する恐れもあると述べた。
「ぎょっとする」数字だが、決してあり得ない話ではない。労働省が発表した2月の雇用統計によると、小売り、娯楽、その他接客業の労働者数は約3300万人と、米国全体の20%を占めている。このうち5人に2人が一時的にせよ職を失えば、失業者数は1300万人に上る計算だ。
これはドミノ現象を引き起こすだろう。ムーディーズ・インベスターズ・サービスによると、輸送、卸売り、教育サービス業にもリスクがある。建設業も影響を受けやすいだろう。建設業は金融危機後に雇用が20%減ったが、こうした産業全てに同程度の影響が出るとすれば、ムニューシン長官の「予言」が現実化するかもしれない。
金融危機後と今回の違いはスピードだ。10年前も失業は増大したが、それは数カ月かけて起こったことだった。当時でさえ、失業率が10%を超えることはなかった。失業率が近年25%を超えた経験を持つギリシャのような国でも、数週間ではなく数カ月かけての上昇だった。トランプ政権は労働者への小切手の支給を約束しているが、1回限りではなくて、しかも当初案の1200ドルよりも大きな額を送る必要があるかもしれない。
今回の状況には好悪両面がある。金融危機は需要を押し下げ、厳しいバランスシート調整を招いた。今回の問題はむしろ、供給面の圧迫だ。このため前回よりも素早い回復が見込めるかもしれない。ただ、回復が数カ月ではなく数週間というスピードで起こるにしても、それは、その間に産業側に超過度な供給圧力を求めることになろう。
●背景となるニュース
*米労働省が19日に発表した14日終了週の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は28万1000件(前週は21万1000件)と、2年半ぶりの高水準だった。
*ロイターによると、21日終了週のエコノミスト予想は150万件。同週の数字は26日に発表される。
*ムニューシン財務長官は17日、共和党上院議員らとの会合で、失業率は20%に達する可能性があると述べた。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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