コラム:トランプ氏が選んだ新たなFRB理事候補、適性は十分
Tom Buerkle
[ニューヨーク 3日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領は米連邦準備理事会(FRB)理事の指名において、より伝統的な路線に戻った。新たな候補の1人であるジュディ・シェルトン氏は金本位制復活を掲げている点で異色だが、彼女の経歴はFRB内の政策を巡る議論を活性化させる効果を持つかもしれない。もう1人のクリストファー・ウォラー氏は、セントルイス地区連銀幹部という金融政策のインサイダーだ。
今回の人選は、トランプ氏が以前に起用を検討した、党派性が強く適格性が不足していたスティーブン・ムーア氏とハーマン・ケイン氏の2人とは対照的な特徴を持つ。ムーア氏とケイン氏は、各方面から批判を浴びた結果、理事指名を辞退した。トランプ氏はしばしばFRBとパウエル議長を批判しているが、新たに選んだシェルトン氏とウォラー氏は、比較的中立性があり、経済学の知識という面でも一定の基準を達しているので、理事候補としてはよりふさわしい。
もっともシェルトン氏の考えは、経済学の正統派とは程遠い。同氏がずっと前から提唱する金本位制について、ほとんどの経済学者は景気悪化時におけるFRBの対応能力を低下させてしまうとみなしている。シェルトン氏は、金融危機後にFRBが採用したゼロ金利と債券買い入れにも批判的だ。
シェルトン氏はここ数週間で態度を変え、FRBはトランプ政権の減税や規制緩和が経済に効果を及ぼせるように、利下げするべきだと主張している。これはご都合主義のように見受けられ、恐らくFRB理事になればトランプ氏の意見を代弁する存在になるだろう。ただ同氏は昨年、現在務めている欧州復興開発銀行(EBRD)米国理事の指名に関して上院では特に異議が出ずに承認されている。
一方でウォラー氏はさらに伝統的なFRB理事候補の条件に沿った人物であり、最近共同執筆した論文では、ゼロ金利下のFRBによる債券購入は景気を刺激できるとの見解を示した。ウォラー氏は、中央銀行が政治的な介入を受けず独立性を保つことの重要性も強調している。
シェルトン氏、ウォラー氏ともにFRB理事としての十分な資格を持ち、2人の指名によってFRBの独立性が直接脅かされることはない。
両氏が理事になれば、トランプ氏が再選を果たし、2022年に現在の任期を終えるパウエル議長の後任を探そうとする場合、他の理事とともに後任候補に入ってくるのは確かだ。しかし当面の話とすれば、シェルトン氏のような批判者を内部に迎えれば、FRBが一段と政治圧力を受けるのを防ぐ上で役立つ可能性がある。一番控えめな言い方をするなら、今回トランプ氏が選んだ候補は、理事就任に必要な条件は満たしている。
●背景となるニュース
・トランプ米大統領は2日、欧州復興開発銀行(EBRD)米国理事のジュディ・シェルトン氏と、セントルイス地区連銀のクリストファー・ウォラー執行副総裁をFRB理事に指名する意向を表明した。
・シェルトン氏は、金融危機後にFRBが行った緩和政策に批判的で、金本位制の復活も提唱した。一方ここ数週間では、トランプ氏に呼応する形でFRBが利下げすべきだと発言している。
・ウォラー氏は最近の論文で、ゼロ金利下におけるFRBの債券購入は景気を刺激できるとの見解を示した。ウォラー氏の上司であるセントルイス地区連銀のブラード総裁は、先月の連邦公開市場委員会(FOMC)でただ1人、25ベーシスポイント(bp)の利下げを主張した。
・トランプ氏が以前にFRB理事への起用を検討していた保守系経済評論家スティーブン・ムーア氏と、元ピザチェーン経営者のハーマン・ケイン氏は今年、いずれも指名を辞退した。
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