コラム:米銃規制の強化、トランプ氏にも有効な戦略

コラム:米銃規制の強化、トランプ氏にも有効な戦略
9月12日、トランプ米大統領、銃規制推進派、銃器メーカーへの投資家。この3者の共通点は何か?写真は7月、米バージニア州リッチモンドで銃規制を訴えるデモ(2019年 ロイター/Michael A. McCoy)
John Foley
[ニューヨーク 12日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領、銃規制推進派、銃器メーカーへの投資家。この3者の共通点は何か? 銃器が危険な人物の手に渡るのを禁じる法案成立から恩恵を得られる立場にあることだ。
共和党のトランプ氏が銃購入者の犯罪歴調査厳格化を立法化することなど想像できないかもしれない。オバマ前大統領は2013年にこうした法案の成立に挑んだが果たせなかった。しかし、もしトランプ氏が20年の大統領選を見据えて戦略的に考えようとするならば、立法化しない手はないだろう。
米国では銃によって年間4万人近い命が奪われている。それにもかかわらず、危険人物の銃所持を禁ずる法案は成立に向けた動きが中途半端なままだ。小売業者が顧客に銃器を販売する際は購入者の犯罪歴調査が義務付けられているが、個人と個人の間の販売にそうした規制はない。
下院は2月にこうした抜け道をふさぐ法案を可決した。この夏に銃乱射事件が相次いだことから、共和党のマコネル上院院内総務も、ホワイトハウスが前向きな姿勢を見せるならば犯罪歴調査の強化に取り組む意欲はあると表明した。
トランプ氏はこれまで銃規制強化に反対の立場を取っており、全米ライフル協会(NRA)の強力な後ろ盾となってきた。しかし米産業界はこの問題で態度を変えている。ウォルマートなど小売業者は今や、議会に包括的な犯罪歴調査の支持を求めている。
8月にエルパソのウォールマート店舗で起きた銃乱射事件では、22人が死亡した。
銃規制強化派はトランプ氏の支持層の一部ではないかもしれないが、ウォルマートの買い物客と従業員のうち数百万人は確実にトランプ氏の支持層だ。
トランプ氏は、全面的な銃器購入者の犯罪歴調査や、危険があるとみなされる人物から銃器を没収できる「レッドフラッグ法案」を支持することが政治的に有効だと気付くかもしれない。ホワイトハウス入りを目指す民主党候補の大半は銃規制改革を主要公約に掲げている。共和党の大統領として銃器の安全な使用を公に支持し、議会の手詰まり状態を解消すれば、銃器をだしにして政治的な強みを増強できるだろう。
銃器メーカーも勝ち組になれる。銃規制改革の機運が出てくるたびに、銃器メーカーの株価と売り上げは高まる傾向がある。アメリカン・アウトドア・ブランズなど銃器メーカーの投資家は、オバマ前大統領が銃規制強化に取り組んだが果たせなかった時期に、20%強もの年間リターンを得ることができた。トランプ政権になってから銃器メーカーの株価は大幅に下げている。
トランプ氏は米国のために正しいことをするチャンスだ。しかも銃器商人たちに株価上昇のチャンスを与える機会も手にしている。
●背景となるニュース
*米下院司法委員会は10日、憎悪犯罪の履歴があるなど危険をもたらす恐れのある人物の銃器所持禁止措置などを盛り込んだ新たな銃規制強化法案を承認した。
*民主党が過半数を握る下院は2月に銃器購入者の犯罪歴調査の抜け穴をふさぐ法案を可決したが、共和党が優勢の上院では審議が行われず、たなざらしとなっている。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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