焦点:トランプ関税、顧客に転嫁せず 米小売企業がコスト吸収

焦点:トランプ関税、顧客に転嫁せず 米小売企業がコスト吸収
 11月27日、年末商戦シーズンを控えた米国で、大手小売企業がオンライン販売する多くの製品の価格が、中国からの輸入品への関税引き上げにもかかわらず横ばい程度に抑えられている。写真は23日、シカゴのウォルマートでクリスマス用の飾りつけをする店員(2019年 ロイター/Kamil Krzaczynski)
[ワシントン 27日 ロイター] - 年末商戦シーズンを控えた米国で、大手小売企業がオンライン販売する多くの製品の価格が、中国からの輸入品への関税引き上げにもかかわらず横ばい程度に抑えられている。ウォルマート・ストアーズ、アマゾン・ドット・コムといった大手が輸入価格の上昇分を吸収し、消費者に転嫁していないからだ。
これはロイターが小売り分析企業プロフィテロに委託した調査で明らかになった。大手小売企業7社が販売する製品2万1000種類のオンライン価格を分析した。
対象企業はウォルマート、同社傘下のジェット・コム、アマゾン、ターゲット、ベスト・バイ、ゲームストップ、ステープルズの7社。対象品目は贈り物用に購入されることが多い家電、電子機器、玩具、ビデオゲームなどで、昨年10、11月の価格と今年の同時期の価格を比べた。
プロフィテロのシニア・バイスプレジデント、キース・アンダーソン氏によると、電子機器は平均で前年比2.3%上昇したが、全品目の平均は同0.9%の上昇にとどまった。
これは同じ期間のインフレ率よりも低い上昇率だ。2018年のインフレ率は2.4%、19年は年初からこれまでで約1.8%となっている。 玩具の価格は0.2%、ビデオゲームは2%、それぞれ下落した。
ウォルマートとターゲットは調査についてコメントを控えたが、通販業者との協力やサプライチェーンの多様化を通じて関税引き上げに対応している、とする過去の幹部発言を紹介した。アマゾンのコメントは得られていない。ベスト・バイはコメントを控え、ゲームストップからはコメント要請への返答が得られていない。ステープルズもコメントしていない。
<対中関税、消費者直撃を懸念>
米国の年末商戦シーズンは、多くの小売業者にとって年間売り上げの4割近くを稼ぎ出す重要な期間。今年は米中貿易戦争の影響で製品価格が上がり、消費者を直撃するのではないかと懸念されている。
米通商代表部(USTR)によると、中国から米国への輸入総額は昨年約5390億ドルに上り、国別で最大だった。トランプ米大統領は中国製品に関税を課し、貿易協議のカードとして追加引き上げをちらつかせている。
しかし調査会社やコンサルタント、小売企業への取材によると、少なくとも大手企業は今のところ、消費者への価格転嫁を控えている。
オックスフォード・エコノミクスの分析によると、ウォルマートを除く全小売企業の収益性を示すEBIT(利息および税引き前利益)マージンは、昨年10月から縮小して6.7%と、2010年以来で最低となっている。
<「クリスマスを盗む企業はいない」>
電子商取引プラットフォーム、ボーダーX・ラブのジェフ・ウンゼ社長は「グリンチ(クリスマス嫌いの意地悪キャラクター)のようにクリスマスを盗んでしまいたい企業はいないので、消費者への価格転嫁をなるべく抑えている」と話した。
米政府は9月1日、多くの中国製消費財に15%の関税を課したため、大半の小売企業が販売する製品のコストが上がった。例えばディスカウント小売大手ダラー・ツリーは、関税が完全実施されれば第4・四半期に製品コストが約1900万ドル増加するとしている。
プロフィテロの分析によると、ウォルマートは贈り物として人気の高い商品6000品目超の価格が、1年前に比べ0.4%の上昇にとどまっている。アマゾンは9200品目の価格が0.6%上昇。ターゲットがオンライン販売する1200品目の価格は0.9%下がった。
対照的に、ステープルズのようなチェーン店では価格が4.7%上がり、ベスト・バイは1.1%上昇した。
直近のトランプ関税の対象から外れた衣料品やアクセサリーなどは、今回の調査対象に含まれていない。ただ、これらは12月15日に予定される新たな措置により15%の関税をかけられる可能性がある。
(Nandita Bose記者)

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