コラム:スカラムチ氏解任は序の口、根幹問題は大統領の迷走
Gina Chon
[ワシントン 31日 ロイター BREAKINGVIEWS] - アンソニー・スカラムチ氏の広報部長解任は、米ホワイトハウスの運営を巡る一番大きな問題の解決にはならない。新たに大統領首席補佐官に就任したジョン・ケリー前国土安全保障長官は、スカラムチ氏を追い出すことで、トランプ政権内の混乱を収めるための適切な最初の手を打った。ただしケリー氏にとってより重大な任務は、トランプ大統領に自らを律する考えを持たせることだ。
ケリー氏は就任初日に、スカラムチ氏解任という「成果」を挙げた。自身で「役に立つ男」と評するスカラムチ氏だが先週、記者団の前でプリーバス前大統領首席補佐官とバノン首席戦略官兼上級顧問を口汚い言葉でののしり、ホワイトハウスの情報発信を間違った方向に導いた経緯があるだけに、解任は賢明な措置と言える。
しかしトランプ氏の大統領としての迷走は1月の就任以降ずっと続いてきたものだ。イスラム圏の一部諸国からの入国禁止命令は、さまざまな法的な逆風に見舞われ、ようやく最高裁が一部だけの実施を認めた。ごく最近では、医療保険制度改革(オバマケア)廃止法案に賛成票を投じるよう議員に高圧的な態度で要求したが、結局上院で否決される結果となった。また昨年の米大統領選干渉疑惑「ロシアゲート」問題では、連邦捜査局(FBI)長官だったジェームズ・コミー氏を解任し、ジェフ・セッションズ司法長官の更迭もちらつかせることにより、世論の印象を悪くしている。
バリアント・ファーマシューティカルズやフォルクスワーゲン、ヤフーなど騒ぎを起こした企業は、企業統治のまずさや事業戦略の失敗、ないしは経営上の不手際といったより大きな問題から投資家の目をそらすために、広報担当重役を新たに起用したり、逆に首を切ったりすることが多い。
そういった意味で、スカラムチ氏の件はホワイトハウスが直面している最悪の問題とは程遠い。トラブルの根幹はトランプ氏にあるのだろう。ケリー氏がこれから挑む闘いは、勝利するのがずっと難しい。
●背景となるニュース
*ホワイトハウスのアンソニー・スカラムチ広報部長が解任された。大統領首席補佐官に就任したジョン・ケリー前国土安全保障長官の要請だった。21日にはスカラムチ氏の広報部長起用に反対してショーン・スパイサー氏が報道官を辞任している。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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