コラム:堅調な米国株に隠された悲観的トレンド

コラム:堅調な米国株に隠された悲観的トレンド
1月13日、時に数字はうそをつくか、少なくとも誤解を与える場合がある。ニューヨーク証券取引所で撮影(2020年 ロイター/Brendan McDermid)
Anna Szymanski
[ニューヨーク 13日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 時に数字はうそをつくか、少なくとも誤解を与える場合がある。2019年の堅調な米国株式相場から、投資家は企業の将来が明るいと感じてしまう。だがS&P総合500種は約30%上昇したものの、米国株ファンドからは1800億ドルを超える資金が流出した。金融緩和の発動が、本当はもっと悲観的なトレンドを見えにくくしているのだ。
米連邦準備理事会(FRB)は2つの面で、実態をゆがめている。米国株は18年末に14%下落したおかげで、19年は年間上昇率の「発射台」を低くすることができた。そして14%安の大半は、金利上昇とFRBのパウエル議長のよりタカ派的な発言に帰せられる。次に、19年にFRBが実施した3回の利下げで米国株の魅力が高まった。低金利局面では、投資家は経済成長を高めに見積もるので、企業の将来的なキャッシュフローの現在価値も高まる計算となる。
ゴールドマン・サックスの説明では、途方もない市場のパフォーマンスは、投資家が将来の企業収益により多くの対価を支払う用意がある状態でもたらされる。実際、金利が非常に低いので、FRBのモデルを用いたS&P総合500種の株価収益率(PER)は18倍と、割高には見えない。このモデルは、推計益回りと10年物米国債の利回りを比較したものでとても大ざっぱとはいえ、他の条件に変化がなければ、金利低下がバリュエーションを生み出せるという点が重要だ。
一方で依然として株式を買い続ける1つのグループがある。つまり企業自身だ。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによると、19年の自社株買いの規模はおよそ7350億ドルと、史上最高だった18年の8000億ドル強に迫る規模だった。低コストの社債を発行して自社株を買うのは、低金利時には合理的な行動だ。それだけでなく、自社株買いは1株当たり利益を押し上げる効果もあり、金融危機後はずっと株価を支えてきた。
リフィニティブがまとめたアナリスト予想に基づくと、19年第4・四半期の米企業利益は0.6%減少した見込みだが、今年は9.6%の増益となりそうだ。それでもこうした見通しは当てにならないことが、過去の経緯で証明されている。さらに長期金利を見れば、今後の経済成長を楽観できる余地は乏しい。米国株の投資家は、相場水準とともに資金フローも注視する必要がある。
●背景となるニュース
*リフィニティブがまとめたアナリスト予想に基づくと、19年第4・四半期のS&P総合500種企業の利益は0.6%減少した見込み。実現すれば2期連続の減益となる。
*S&P総合500種は19年を通じて、配当抜きで29%上昇した。リフィニティブによると、13日時点の予想利益に基づく株価収益率は18倍前後。19年10月は16倍、18年末は14倍だった。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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