コラム:20年は米台接近一段と、中国の反発必至
Robyn Mak
[香港 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 2020年は台湾から目を離してはいけない。世界的にサプライチェーンの移行が進む中で、台湾の重要性は高まろうとしている。また米国では反中機運が強まるばかりだ。この2つの要素は、米国と台湾の関係強化を予言しており、論争を呼んでいる両者の貿易協定を実現することの妥当性が増しつつある。
米中貿易摩擦は、台湾経済にとってまさに「棚からぼた餅」だった。多くのアジアの輸出国が需要鈍化に苦しむのを尻目に、台湾は最近になって20年の域内総生産(GDP)見通しを2.7%に引き上げた。地元製造業が生産拠点を中国本土から台湾に戻し、投資が増加するのは間違いない。
さらに米企業が台湾からの製品購入を拡大している。例えば今年上半期には、米政府が追加関税を発動した影響で、国連の報告書によると40億ドル強の事務機器や通信機器の注文が台湾に舞い込んだ。マイクロソフトやアルファベット子会社グーグルなどは、台湾への投資を強化した。
背景にあるのは、独自の統治機構を持つ台湾をあくまで自国領土の一部だとみなす中国に対し、米国民が抱く反感だ。米議会が香港でデモを継続する民主派を後押しする目的で承認した「香港人権・民主主義法」はトランプ大統領の署名を経て成立。また米下院は、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒に対する中国政府の弾圧を非難する「ウイグル人権法案」も可決した。
そして台湾を支援するための法案も登場している。米議会は、政府に対して台湾に打撃を与える行動を取った国との関係を弱めるよう求める「台北法(Taiwan Allies International Protection and Enhancement Initiative Act)」を打ち出したのだ。これには台湾で独立志向の蔡英文総統率いる民進党が政権を獲得して以来、8カ国が台湾と断交して新たに中国と外交関係を結んだという事情がある。台北法は、米国と台湾の貿易協定交渉も提案している。
米国と台湾が貿易協定締結に向けた話し合いを始めれば、中国の習近平国家主席は激怒するだろうし、既に今にも足場が崩れそうな米中貿易協議が一段と紛糾しかねない。だがそれでも米国が台湾と貿易協定に合意することには、戦略的な合理性が存在する。
アップルやクアルコムといった米ハイテク大手は、台湾製部品を頼りにしている。昨年、台湾製造業の米国からの受注額は約1500億ドルに達した。おまけに半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)<2330.TW>が次世代半導体開発を主導しているのに比べて、中国はまだ急いで追いつこうとしている段階だ。そこで米国と台湾の貿易協定が成立すれば、蔡氏が台湾の製造業を守り、中国本土への経済的な依存を減らす手助けになるのではないか。
だが同時に、それによって台湾が米中の新たな激しい対立の火種になるのは必至だ。
●背景となるニュース
*台湾は11月29日、今年と2020年の経済成長率見通しを小幅上方修正した。中国本土から台湾への製造拠点回帰や、次世代通信規格「5G」ワイヤレスや人工知能(AI)などを含む新技術に利用される電子製品への需要回復を理由に挙げた。
*最新見通しでは、今年のGDP成長率は従来の2.46%から2.64%に、20年は2.58%から2.72%にそれぞれ引き上げられた。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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