アングル:景気後退・弱気相場への懸念増す、米での新型ウイルス拡大で

アングル:景気後退・弱気相場への懸念増す、米での新型ウイルス拡大で
 3月8日、新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済や資産価格に及ぼす影響を投資家が見極めようとする中、「弱気相場」や「リセッション(景気後退)」という言葉が使われる頻度が増えつつある。写真は6日にニューヨーク証券取引所で撮影(2020年 ロイター/Andrew Kelly)
[ニューヨーク 8日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済や資産価格に及ぼす影響を投資家が見極めようとする中、「弱気相場」や「リセッション(景気後退)」という言葉が使われる頻度が増えつつある。
新型ウイルスの急速な感染拡大は世界中で金融市場の大幅な変動を招いている。投資家の多くは、感染状況が今後どのような道をたどり、各国政府の対応がどこまで効果を発揮するかを巡り不透明感が強いため、経済への打撃が資産価格にどこまで織り込み済みか判断するのは難しいとしている。
ラボバンクは前週のリポートで、多くの西側諸国が当初対策を講じず、問題はないとの見解を国民に示す対応をとったのは効果的でなかったと指摘した。
米国で感染が拡大するに伴い、投資家の間では、一貫性のない政府の対応や国内の感染者数を巡る混乱、感染への不安や政府による移動制限が個人消費や経済全体に及ぼす可能性を巡って懸念が強まった。
リーダー・キャピタルのジョン・レカス最高経営責任者(CEO)兼シニアポートフォリオマネジャーは、「市場はまだ現状についていっていない。株価は今年、さらに20%程度下落するとみている」と述べ、株価にはまだ下落余地があると指摘。景気後退入りの可能性が高いとの見方も示した。
ドイツ銀行のアナリストは、新型ウイルスの感染拡大が早期に封じ込められなかった場合、S&P総合500種が直近高値から20%超下落して弱気相場入りするシナリオを想定している。同指数は6日終値時点で直近高値を8%下回った。
ドイツ銀は「株価は著しく割高な水準からやや割高な水準に下落したにすぎない」とし、「経済活動の鈍化によるマクロ経済や企業業績の成長減速の可能性はまだ株価に織り込まれていない」と分析した。
ドイツ銀はメインシナリオとして米株価が15─20%下落した後に持ち直すと予想。より悲観的なシナリオではさらに大幅な株価下落と景気後退入りを予想している。
ボラティリティーの急速な高まりは、強気相場が11年目を迎える中で起きた。S&P500が2008年の金融危機後に付けた安値は09年3月9日の676.53だった。同指数の直近高値は2月19日に付けた3393だ。
バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)・メリルリンチはリポートで、新型ウイルスの感染拡大を「のろのろ運転の列車事故」にたとえた。「起きている出来事の重大さに市場がゆっくりと徐々に気付く」状況を指している。
トールバッケン・キャピタル・アドバイザーズのマイケル・パーブズCEOは、テクノロジーセクターは「まだ強すぎる」とし、「テクノロジー株がさらに売り込まれるまで、乗り遅れ組の売りが出尽くしたとは判断できない」と語った。
一部のアナリストは、機関投資家が為替のエクスポージャーをヘッジするために用いるクロスカレンシー・ベーシス・スワップが圧迫される可能性などを注視している。クレジット市場や企業の資金繰りにも懸念が出ている。
この先1週間には、中小企業の景況感や消費者物価指数(CPI)など、新型ウイルスの感染が広がる前の2月の米経済を映す一連の指標が発表される。
オックスフォード・エコノミクスのアナリストは、経済への最大のリスクは感染者や死者の数そのものではなく、日常生活の混乱や移動の削減、政府による制限措置などの打撃によってもたらされる可能性があると指摘した。また、年内に米国が景気後退に陥る確率を35%と予想し、1月上旬の25%から引き上げた。
(Megan Davies記者)

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