コラム:米ホワイトハウスが招く自らの「雇用危機」

コラム:米ホワイトハウスが招く自らの「雇用危機」
 7月21日、米ホワイトハウスは、自らの「雇用危機」を招いている。ヘッジファンド創業者で大統領顧問のアンソニー・スカラムッチ氏が広報部長に任命されたことを受け、スパイサー大統領報道官が辞任した。写真は米バージニア州で22日撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)
Gina Chon
[ワシントン 21日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米ホワイトハウスは、自らの「雇用危機」を招いている。ヘッジファンド創業者で大統領顧問のアンソニー・スカラムッチ氏が21日、広報部長に任命されたことを受け、スパイサー大統領報道官が辞任した。
トランプ大統領はすでに、連邦捜査局(FBI)長官を解任し、財務長官のはしごを外し、司法長官の人選を後悔していると発言。米国企業は求人応募者の不足に苦戦しているが、それは大統領も同じだ。
スパイサー氏は、トランプ政権の発足初日からの忠実な歩兵だった。大統領就任式に集まった群衆の数を記者が不正確に報道したとの誤った主張をして以降、スパイサー氏にはその地位が安泰かどうかの憶測がついて回り、風刺のきいたコメディー番組「サタデー・ナイト・ライブ」で格好のネタにされてきた。ヘッジファンド「スカイブリッジ・キャピタル」創業者のスカラムッチ氏のホワイトハウス入りが決まり、スパイサー氏もついに「もうたくさん」と音を上げたようだ。
人事管理は、トランプ大統領の得意分野ではない。トランプ氏の外部弁護士であるマーク・カソウィッツ氏の職務が縮小されたことを受け、同氏の広報担当者だったマーク・コラーロ氏が辞任した。
トランプ大統領は19日、セッションズ司法長官が自ら、昨年の米大統領選におけるロシアによる介入やトランプ陣営との癒着疑惑を巡る司法省の捜査から外れると知っていたら、司法長官に指名しなかった、と米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで語った。
7月上旬、ムニューシン財務長官は、身内の共和党からも批判が出ていたにも関わらず、ロシアと共同でサイバーセキュリティー部隊を創設するというトランプ氏の構想を公に称賛した。その直後、トランプ氏は、この構想は実現し得ないとツイートした。
7月の第1週には、政府倫理局のウォルター・シャウブ局長が辞任した。トランプ大統領は5月、ワシントンを離れて不在だったFBI長官のジェームズ・コミー氏を突然解任した。ロシア疑惑への捜査が理由の1つとされた。
政権発足から半年を経た今になっても、ホワイトハウスの任命で決まる1000以上の政府ポストが空席のままになっている。
トランプ氏は、100超の幹部ポストを埋めたが、これは前任の大統領2人が就任後4カ月で任命した数の半分程度だ。個人的な理由やビジネス上の利益相反に絡む問題で、指名を辞退した候補者がいた一方で、十数人がトランプ氏を拒否する形で辞退した。
全米で、似たような事態が起きている。2008年の金融危機以降、失業率は改善したが、労働参加率は改善していない。これは、希望を見いだせず、職探しをやめてしまった人がいかに多いかを示している。トランプ大統領にとって、これは、痛いところを突く現象だ。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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