コラム:ベトナムが脱コロナ「独り勝ち」、感染抑制と成長両立
Robyn Mak
[香港 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ベトナムは新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込み、今年の経済成長率が世界最高水準に達しようとしている。世界的に貿易が落ち込む中で、サプライチェーンの「脱中国化」を進め、米中の政治的対立に巻き込まれたくない企業にとって、頼りがいのある国に見えるだろう。コロナ危機の最大の勝者は、ベトナムになりそうだ。
ベトナム政府による果敢なコロナ対応は功を奏した。中国と1400キロにわたり国境を接するが、世界保健機関(WHO)によると、6月16日時点で新型コロナの感染者数はわずか334人で、驚くべきことに死者はゼロ。しかもこの数字は信用できるようだ。グーグルの移動データによると、職場や住宅地の活動は、感染拡大前の状態に回復。5月の製造業活動は前月から改善し始めた。
グエン・スアン・フック首相は、今年の成長率について5%の目標を掲げている。昨年実績の7%には届かないが、コロナ感染の下では野心的な数字だ。
観光業が国内総生産(GDP)に占める割合は10%以下に過ぎない。世界的に需要が低迷し、国境を越える移動は事実上、凍結されており、第2・四半期の成長率は過去10年で最低だった第1・四半期の3.8%から大幅に落ち込むだろう。
だが、そうだとしても、ベトナムは2020年の成長率がプラスと予想される数少ない主要国の1つとして際立っている。世界銀行は同国の2020年成長率を2.8%と予想した。
若者層が多い人口構成や企業寄りの政策のおかげで、韓国のサムスン電子<005930.KS>のような製造業大手が以前から進出している。ナティクシスのエコノミスト、チン・グエン氏によると、過去5年間の海外輸出におけるシェアの伸びは東アジア地域で最も高い。
すでに過去最高水準にある外国からの直接投資額が、さらに加速するのは間違いない。新型コロナに鮮やかな対応を示したことで、製造業の誘致を望みながらコロナ対策に苦闘するインドなど他の国に対して、優位に立つだろう。
16日には米プライベートエクイティ(PE)のKKRがベトナムの住宅開発大手・ビンホームズに対する6億5000万ドルの出資を発表。「安全な避難場所」として関心が高まっている様子が浮き彫りになった。ベトナムは新型コロナという危機をチャンスに変え、成長し続けることができる。
●背景となるニュース
*世界銀行は先に公表した「世界経済見通し2020年6月版」で、ベトナムの今年のGDP成長率が東アジア・太平洋地域の発展途上国で最も高い2.8%になると予測した。
*ベトナムのグエン・スアン・フック首相は5月5日、今年は5%を超える経済成長を維持するのが目標だと述べた。
*世界保健機関(WHO)によると、ベトナムは6月16日時点で新型コロナウイルスの感染確認数が334人、死者はゼロ。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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