前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』/光文社新書

 さぁ、むさぼり喰うがよい―。バッタのコスプレに虫取り網を手にした著者のインパクトある表紙が目を引く。そして裏表紙ではバッタの大群の中で全身緑色のタイツ姿でバンザイ。その姿から伝わるのは、ただならぬ気迫や覚悟…。本書はバッタ被害を食い止めるために、アフリカ・モーリタニアに降り立った著者の研究を記録した。

 著者の前野ウルド浩太郎さんは、国立研究開発法人国際農林水産業研究センター研究員であり、昆虫学者(通称・バッタ博士)だ。14年間、研究でバッタを触り続けた結果、バッタアレルギーを患う。だがなぜそれでもバッタとともに生きるのか? それは「バッタに食べられたい」という子どものころからの夢をかなえるため。そんな彼がサハラ砂漠に単身で乗り込み、バッタの研究に身を投じた結果、現地のミドルネーム“ウルド”を授かるまでに。着いて早々入国拒否された揚げ句、持ってきたお酒を全て没収(のちに腹いせと判明)、支援物資がネズミに食い荒らされる…などさまざまな困難に見舞われる。だがそれすらも愉快に感じられるのは、著者の文章力とバッタ愛によるものだろう。写真も多数掲載しているので、細かい研究の経過や成果が分かりやすい。果たして「神の罰」=バッタの大発生を制圧し、子どものころの夢をかなえることはできるのか―。最後まで見逃せない。

 「自分の婚活よりバッタの婚活」のうたい文句とともに、本作品の続編『バッタを倒すぜ アフリカで』が17日に発売される。著者とバッタの奇想天外な物語はまだまだ続きそうだ。(光文社新書/1012円)

(コンテンツ部・池田知恵)